1997 Fiscal Year Annual Research Report
梗塞後心室リモデリングに及ぼすプレコンディショニングの影響とその機序に関する研究
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09770491
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
土田 哲人 札幌医科大学, 医学部, 助手 (00284993)
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Keywords | 心筋梗塞 / 心筋肥大 / リモデリング / アポトーシス |
Research Abstract |
1.心筋梗塞成立後の心機能と心室リモデリングの関係 (1)家兎心筋梗塞慢性実験モデルの作製 家兎をペントバルビタール麻酔後、気管切開による調節呼吸下、左開胸にて心臓を露出し、左冠動脈回旋枝を結紮し心筋梗塞を作製した。左開胸部と気管切開部を修復した後、4週間観察した。対称群(Sham ope)として6例を梗塞群(再灌流なし)として9例施行したが、死亡例は梗塞群の1例で急性期心室性不整脈によるものであった。 (2)心機能の評価 上記モデルを用い心臓超音波検査により梗塞作製前、梗塞作製直後、3日後、1、2、3、および4週間後の左室壁厚、左室内腔、駆出率の経時的変化を観察した。対称群では、手術前の中隔厚(IVSTD)、後壁経(PTWd)は、各々24±1、22±1mm、左室拡張終期径(LVDd)は、140±5mm、さらに心臓ポンプ機能の指標である%FSは30±2%であったが、いずれも4週間の経過中変化を認めなかった。一方梗塞群では、梗塞前においていずれの指標も対照群と同等であったが、IVSTDは2週後より26±0mmと著明な肥厚を認めその程度は4週まで同等であった。PTWdは梗塞後3日目に18±1mmと非薄化を認め、その程度は4週後まで変わらなかった。LVDdは、梗塞後経時的に拡大を続け、3週後では172±11mmと著明な拡大を認めた。しかし、それ以後は変化を認めなかった。%FSは梗塞3日後に17±1%と著明な低下を示した。その後軽度回復を認め2-4週は23-25%で経過した。以上の所見より家兎においては、梗塞後の心筋リモデリングの進展は約3-4週で完成された状態になるものと考えられた。さらに、梗塞後の心機能の低下は、リモデリングの進展に伴い軽度改善する可能性が示唆された。 (3)心筋リモデリングの組織学的検討 梗塞後4週目の心臓を摘出し、hematoxin-eosin染色およびAzan染色にて組織学的に検討した。梗塞部はすでに完全に結合組織に置き変わっており、著明な非薄化を示した。一方非梗塞部では、梗塞部の対側にあたる中隔側で著明な肥厚を示しており、特にその肥厚部の内・中層において心筋細胞径(長径、短径とも)の拡大、結合組織の沈着が毛細血管周囲を中心に観察された。肥厚および結合組織沈着の程度は梗塞量に比例して顕著であった。Tunnel法によるアポトーシスの検討では、梗塞後4週目の心臓においては、梗塞部におけるアポトーシスは認められなかった。非梗塞部においては著明な肥大をきたした心筋においてのみ、わずかに中・内層tunnel陽性細胞を認めた。
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