1997 Fiscal Year Annual Research Report
IgA腎症におけるメサンギウム障害のマーカーとしての系球体内胎児型ミオシンの発現
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09770547
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
宇都宮 靖 鳥取大学, 医学部・付属大学, 助手 (60263464)
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Keywords | IgA腎症 / 紫斑病性腎炎 / メサンギウム増殖性腎炎 / 胎児型ミオシン / PDGF-BB / PDGF-AA |
Research Abstract |
平成9年度は,各メサンギウム増殖性腎炎(IgA腎症,紫斑病性腎炎,メサンギウム増殖を伴うネフローゼ症候群)の腎生検凍結切片を対象とし,メサンギウム障害のマーカーとして考えられるサイトカイン(PDGF-AA,PDGF-BB,bFGF)を酵素抗体法で染色した.紫斑病性腎炎は7症例8検体,非IgA型メサンギウム増殖性腎炎は3症例3検体,IgA腎症は1症例1検体である.その結果,紫斑病性腎炎8検体のうち発症6ヶ月以内に行った腎生検組織3検体でメサンギウム細胞内にPDGF-BB蛋白が発現されていた.一方,発症2年以上で行われた腎生検組織ではメサンギウム細胞におけるPDGF-BBの発現は見られず,急性期紫斑病性腎炎におけるメサンギウム増殖を伴うネフローゼ症候群3検体は発症早期に行った腎生検組織であり,3検体中1検体にPDGF-BBがメサンギウム細胞内に発現していた.特発性ネフローゼ症候群におけるメサンギウム細胞増殖の機序として病初期の強いメサンギウム障害が関与していることが示唆された.IgA腎症の1検体においてはメサンギウム細胞に強いPDGF-BBの発現が見られ,実験腎炎(抗Thy-1腎炎)モデルにおけるPDGF-BBの発現と同様にヒトIgA腎症においても同様のメサンギウム障害が存在するものと思われた。PDGF-AAに関しては,PDGF-BBと同様の染色傾向を示したが,PDGF-BBと比較してその発現は弱かった.また,bFGFに関しては今回の検体で有意に糸球体内発現を見たものはなかった.今後症例を増やし,メサンギウム細胞の形質転換を意味する胎児型ミオシン(SMemb)の糸球体内発現とメサンギウム障害との関連を検討したい.
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