1998 Fiscal Year Annual Research Report
メタンフェタミン逆耐性形成における脳内興奮性アミノ酸神経系の役割
Project/Area Number |
09770726
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
吉田 幸宏 旭川医科大学, 医学部, 講師 (50220687)
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Keywords | メタンフェタミン / 逆耐性 / 興奮性アミノ酸 / 皮質線条体路 / ドーパミン |
Research Abstract |
1. 動物行動における興奮性アミノ酸性皮質線条体路の役割を探る目的で,各稙興奮性アミノ酸受容体遮断薬を両側の尾状核・被殻に注入し,ラット(Wistar系雄性成熟ラット)の行動を観察した。その結果,選択的なNMDA受容体遮断薬であるD(-)-2-amino-5-phosphono-pentanoic acid(D(-)AP5,一側あたり5μg)の注入によって,ラットの過活動(常同行動,移所運動,および立ち上がり行動の増強)が惹起された。また,D(-)AP5の注入は,ドーパミン受容体遮断薬であるhaloperidol(1mg/kgを腹腔内投与)によって惹起されるカタレプシーを著明に抑制した。一方,D(-)AP5の立体異性体であるL(+)AP5(一側あたり5μg)や非NMDA受容体遮断薬であるL-glutamic acid diethyl ester(一側あたり100μg)の注入は,ラットの自発行動およびhaloperidolによるカタレプシーに対して全く影響を与えなかった。以上の結果から,NMDA受容体を介する皮質線条体路神経伝達は動物行動の抑制に関与し,この伝達機構の低下によって脳内のドーパミン神経活動が亢進した場合と類似する行動変化(過活動およびカタレプシーの減弱)が生じることが示唆された。 2. 興奮性アミノ酸性皮質中脳経路の役割についても検討するため,両側の腹側被蓋野にD(-)AP5またはL(+)AP5(いずれも一側あたり2μg)を注入し,ラットの行動を観察した。その結果,D(-)AP5の注入によって移所運動量が著明に増加したが,L(+)AP5ではこのような効果は認められなかった。したがって,NMDA受容体を介する皮質中脳経路神経伝達も,動物行動の抑制に関与している可能性がある。 3. 以上の結果から,皮質線条体路と皮質中脳経路のNMDA受容体伝達が動物行動の調節に強く関与し,この調節機構に何らかの形でドーパミン神経系も関与していることが示唆された。今後,これらの基礎検討に基づき,メタンフェタミン逆耐性形成におけるNMDA受容体伝達の役割についての検討を進める予定である。
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