1997 Fiscal Year Annual Research Report
島根県下の在宅死亡例における痴呆の神経病理学的調査
Project/Area Number |
09770740
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Research Institution | Shimane Medical University |
Principal Investigator |
飯島 正明 島根医科大学, 医学部, 講師 (00222802)
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Keywords | アルツハイマー型老年痴呆 / 神経原線維変化 / 老人斑 |
Research Abstract |
在宅死亡例48例について臨床神経病理学的検討を行った。脳血管性痴呆1例(2%)、アルツハイマー型老年痴呆(SDAT)4例(8%)、脳血管病変を伴う非痴呆例3例(6%)、高度老年変化を伴う非痴呆例8例(17%)であった。高度老年変化を伴う非痴呆例では、8例全例で海馬領域に多数の神経原線維変化が認められた。8例中5例には皮質には、典型的老人斑、原子老人斑やび慢性老人斑等の老人斑があり、1例では皮質に神経原線維変化が出現していた。しかし、残り3例では老人斑はなかった。老人斑の密度は、海馬CA2、中脳、橋、小脳でSDAT群が、高度老年変化を伴う非痴呆群よりも有意に高かった。しかし、他の領域では老人斑、神経原線維変化の密度に、SDAT群と高度老年変化を伴う非痴呆群で、有意差はなかった。Clinical Dementia Rating(CDR)はDAT群が、高度老年変化を伴う非痴呆群より有意に高かった。また、Physical Self-Maintenance Scale(PSMS)は、高度老年変化を伴う非痴呆群が、SDAT群よりも有意に高かった。これらの結果から、在宅死亡例では高度老年変化を伴う非痴呆例が多数出現する傾向が認められた。高度老年変化による痴呆の発現には、海馬CA1、中脳、橋、小脳等で老人斑が出現することが重要であると思われた。また、高度老年変化を伴う非痴呆群では、SDAT群よりも、PSMSで表される日常生活機能が保たれており、痴呆の発現には、脳の老年変化だけでなく、心理社会的要因も重要であることが示唆された。
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