1997 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト中枢神経系の発生異常におけるアポトーシス関連遺伝子の分子病理学的研究
Project/Area Number |
09770876
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
伊藤 雅之 国立精神・神経センター, 疾病研究第2部, 研究員 (50243407)
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Keywords | アポトーシス / 発達 / 中枢神経系 / TUNEL / ladder pattern |
Research Abstract |
研究実施計画に沿って、中枢神経系の発生過程における神経細胞のアポトーシス発現を正常発達脳で観察した。 [対象と方法]胎生8週から38週のホルマリンあるいはパラフォルムアルデヒド固定ヒト胎児脳24例の前頭葉。これら対象にヘマトキシリン・エオシン(HE)染色、in situ tailing reaction(TUNEL)法を用い、アポトーシスの組織形態学的評価を行った。また、抗CPP32抗体による免疫組織化学的検索を行った。評価は大脳皮質および側脳室周囲で、細胞1000個当たりのTUNEL陽性細胞数とした。また、southern法により、DNA fragmentationの有無を加え、アポトーシス発現の発達的変化を検討した。 [結果](1)組織形態学的変化:HE染色では核、細胞質共に凝縮したアポトーシス様変化が各週令で観察された。TUNEL陽性細胞は、大脳皮質で胎生18週から24週に1〜3%が観察された。側脳室周囲では、胎生28週以降1〜2%程度が観察された。しかし、CPP32の発現はほとんどなかった。 (2)southern法:胎生20週の大脳皮質で、ladder patternが観察された。 [考察]大脳皮質では、神経細胞の組織化(シナプス形成期)の初期よりTUNEL陽性細胞が観察された。その数は胎生18週から24週頃にピークになり、側脳室周囲では、その出現の時期が遅れていた。TUNEL陽性細胞はsouthern法によるladder patternとHE染色の観察とあわせてアポトーシスと考えられる。しかし、CPP32の発現がみられなかったことより、caspaseによらない系が関与しているものと考えられた。次年度では、脳形成障害での検索と正常発達脳におけるアポトーシスにいたる系の解明を進める予定である。
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