1998 Fiscal Year Annual Research Report
肝細胞癌の再発メカニズムの解明ならびに制御に関する研究
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09770942
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
島田 光生 九州大学, 医学部, 助手 (10216070)
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Keywords | サイトカイン / 肝癌 / 転移 / 接着分子 / 手術侵襲 / ステロイド |
Research Abstract |
【背景】 これまで我々は、肝切除術中の接着分子の発現と、虚血時間の相関を報告した(J Am Collcge Surg;in prcss)。一方、肝転移モデルの実験で、肝虚血傷害による肝転移の増強の報告もある。以上より、肝虚血傷害により炎症性サイトカインが肝類洞内皮細胞に接着分子を発現させ、癌細胞の着床を促進するメカニズムの存在が考えられる。 【目的】 今回、特に肝類洞内皮細胞及びマクロファージに注目し、肝切除による肝内転移成立ならびに肝転移巣発育増強のメカニズムを解明するとともにその制御について検討する。平成9年度までに以下を終了した。 a. 肝切除時の虚血が再発に及ぼす影響に関する検討: 1) サイトカイン(IL-1β)刺激によりHepG2,HuH7の臍帯内皮細胞への接着が促進された。これは肝切除による、ICAM-1,VCAM-1の類洞内発現が虚血時間と相関することの傍証となるものと考えられた。 2) 肝虚血(45分以上)の有無による無再発生存率の比較では、肝虚血有り群において無再発生存率が低い傾向を認めた。また再発パターンの比較では、虚血側の肝臓に多く再発を認めた。これは肝切除→サイトカイン血症→接着分子発現→肝癌細胞の着床転移形式を示唆する所見と考えられた。 b. ヒト肝細胞癌の臨床検体を用いた検討: 非腫瘍部におけるsLex発現:sLex発現群で肝の線維化の増加、多中心性発癌の頻度増加を認めた。腫瘍部におけるsLex発現:正常肝ではsLex発現なし、慢性肝炎や肝硬変では、80%〜90%が細胞膜に陽性。一方、異型性結節では、発現を認めなかった。高分化型肝癌では43%に膜型陽性所見あり、中分化型肝癌では21%が膜型・4%が細胞質型陽性、低分化型肝癌では、36%が細胞質型陽性所見であった。すなわち、慢性肝疾患の進行に伴い、SLexの膜型陽性所見は増加し、境界(前癌)病変で消失した後、再び肝癌で陽性となった。また、肝癌の脱分化(高→低分化)に伴い、膜型から細胞質型への変化が起こることが判明した。 平成10年度は以下の2点につき検討した。 c. 虚血再潅流と肝内転移 (1) 虚血・再潅流が肝内転移に及ぼす影響の検討 Group 1(n=8):70%肝切除のみ+AH7974を回結腸静脈より注入 Group 2(n=8):20分右葉虚血+70%肝切除+AH7974を回結腸静脈より注入 (2) 肝内転移の制御に関する検討:(上記モデル) Group 3(n=4):左記モデル+methylprednisdone投与 Group 4(n=2):左記モデル+FR167653 (結果) (1)Grouplの転移数(39±20)はGroup2(150±36)に比し有意に増加していた。クランプ群で転移数の増加を示した。 さらに、(2)の検討にてステロイド、FR167653にて転移抑制効果を認めている。 (2)Group3の転移数(92±4)とGroup4の転移数(82±21)はGrouplに比し少ない傾向であった。 現在nを増やして検討中である。
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