1998 Fiscal Year Annual Research Report
内胸動脈、助間動脈を用いた下行大動脈手術時の脊髄保護法
Project/Area Number |
09771016
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
八巻 文貴 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (90211622)
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Research Abstract |
雑種成犬4頭を全身麻酔下に左開胸しコントロールとして正常循環下で左房内にマイクロスフェアーを投与した。つぎに大腿動脈からステントグラフトを挿入し胸部大動脈に挿入し人工血管置換術を行なった。平成9年度実験では実際に切開吻合したが、大動脈からの出血がコントロールできなかった、あるいは体外循環からの離脱が困難であった症例があったため、体外循環をできるだけ用いずに実験を行うことを目指した。 ステントグラフト挿入後胸部大動脈から分岐する肋間動脈はステントにより血流はなくなったものと思われ、内2頭で実際に肋間動脈を切断し血流がほとんどないことを確認した。当初予定では左房内に別種のマイクロスフェアーを注入する予定であったが、平成9年度の実験でこの方法では脊髄内マイクロスフェアー濃度が希薄となり濃度測定の誤差が大きくなりすぎたため鎖骨下動脈から投与し、そのマイクロスフェアーが肋間筋にどの程度トラップさ前脊髄動脈領域に流れ込むか観察した。具体的には成犬を屠殺後脊髄を各椎体ごとに採取しマイクロスフェアー量を測定した。 また、薬剤使用下に同様の方法で前脊髄動脈の局所血流分布を測定する予定であったが、実験方法の再検討などもあったため、実際に薬剤投与下の反応を見るまでには至らなかった。 実験結果では脊髄内はコントロールで約20ml/min/100q程度の血流が認められ、脊髄内の各部位で有意差は認められなかった。さらにステントグラフト挿入後の脊髄内血流はO〜約10ml/min/100gと非常にばらつきが大きかった。この結果が個体差によるものなのか、それとも測定上の誤差なのかが、現在の症例数では明らかではなく、今後の更なる検討が必要であると考えられた。実際に血流は確認されているので、側副血行路による脊髄保護は可能なのではないかと推測している。
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