1997 Fiscal Year Annual Research Report
悪性神経膠腫におけるDNAミスマッチ修復異常とアリキル化剤ACNU治療効果の検討
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09771044
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
稲村 孝紀 九州大学, 医学部, 助手 (50274460)
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Keywords | Glioma / microsatellite instability / ACNU / Chenctherapy |
Research Abstract |
<はじめに> 近年DNAミスマッチ修復系がアルキル化剤による細胞致死効果に深く関与していることが明らかになってきた。DNAミスマッチ修復系の異常の有無は、マイクロサテライト不安定性を検出することで容易に検出することができる。今回我々はアルキル化剤であるACNUの治療効果と腫瘍組織内のマイクロサテライト不安定性の存在(ミスマッチ修復系の異常)との相関を検討した。 <材料と方法> 神経膠腫の手術標本31例のパラフィン切片よりDNAを抽出し、5つのマイクロサテライト領域についてPCRを行い、患者白血球DNAのPCR産物と長さの比較した。腫瘍組織内PCR産物の長さが有意に延長しているものをマイクロサテライト不安定性陽性と判定した。 <結果および考察> 31例の組織型はpilocytic astrocytoma3例、fibrillary astrocytoma5例、oligo-astrocytoma1例、oligodendroglioma1例、anaplastic astrocytoma9例、anaplastic oligo-astrocytoma1例、anaplastic oligodendroglioma1例、glioblastoma10例である。マイクロサテライト不安定性陽性例(5つのlocusのうち3つ以上延長)はglioblastomaとanaplastic astrocytomaの2例であった。この結果よりマイクロサテライト不安定性の異常は明らかでなかったが、glioblastomaで10例中2例、astrocytomaで9例中5例に10番染色体上のCA repeatの延長をみとめた。特にanaplastic astrocytomaでは10番染色体上のCA repeatの延長があった症例5例中4例は治療抵抗性で18カ月以内に死亡していた。anaplastic astrocytomaで10番染色体上のCA repeatの延長を認めなかった4例は18カ月以上生存していた(図)。anaplastic gliomaがglioblastomaへと悪性化することに10番染色体異常が関与しているとされているが、今回検定した10番染色体上のマイクロサテライト領域はこの部分とは離れた部分である。転帰のよくなかったanaplastic astrocytomaに10番染色体上のCA repeatの延長が存在したことは、gliomaの悪性化という点からも興味深いことと思われる。
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