1997 Fiscal Year Annual Research Report
シャルコ-関節に対するチロシンキナーゼ阻害薬の特異的効果の解析
Project/Area Number |
09771121
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
井上 剛 関西医科大学, 医学部, 助手 (30268338)
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Keywords | シャルコ-関節 / 破骨細胞 / チロシンキナーゼ / ανβ3インテグリン |
Research Abstract |
破骨細胞は骨吸収禍(ハウシップ吸収禍)と呼ばれる空間を形成し石灰化基質を溶解する。この過程には破骨細胞表面に発現するανγ3インテグリンと骨基質蛋白との強固な結合が必要であり、このανβ3インテグリンのリガンドであるオステオポンチンは主に骨芽細胞によって産生され、破骨細胞の骨表面への接着を誘導する。ανβ3インテグリンについてはチロシンキナーゼ(p60^<c-src>、p125^<FAK>)やホスホリパーゼCγを介する細胞内情報伝達系の関与が知られており、特に、破骨細胞膜表面の接着受容体であるインテグリンと基質蛋白との結合によりc-srcによるチロシンリン酸化が促進される点は重要である。 本研究では神経切断したシャルコ-家兎、およびインターロイキン1を関節内に投与した関節炎家兎の膝関節にチロシンキナーゼ阻害薬を投与し、関節の骨破壊像を病理組織学的に検討することにより、チロシンキナーゼ阻害薬の破骨細胞不活性作用を応用した骨吸収性疾患に対する骨吸収抑制薬としての可能性を検討した。まず、我々は a,家兎膝関節内にインターロイキン1β(IL-1β:50 U//kg)を週1回のペースで12週間投与し、投与開始3週間後より関節の腫脹が開始し約8週後より骨・軟骨に浸潤性病変が認められた。 b、家兎膝関節周囲の知覚神経走行に沿ってアルコール固定を行い、無知覚関節モデルを作成後、回転ゲージ内にて強制運動を行わせることによりシャルコ-関節を再現した。 c,上記実験a,において、IL-1β:50 U//kg投与時にチロシンキナーゼ阻害薬であるゲニシュタイン(10μg/kg)を同時投与し、骨・軟骨病変の程度をIL-1β単独投与の場合と比較検討したところ、浸潤性病変の程度は軽減した。 d,上記実験b,において、強制運動の開始前にゲニシュタイン(10μg/kg)を週1回関節内に投与し、非投与の場合と比較検討したところ、シャルコ-様骨破壊は見られなかった。 以上の結果より、シャルコ-関節の骨破壊過程においてチロシンキナーゼの活性化(おそらくανβ3インテグリンを介する)が関与しているものと考えられた。これを制御することにより、シャルコ-関節に対する新しい治療法が可能となることが予想される。
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