1997 Fiscal Year Annual Research Report
血管平滑筋の受容体作動性カルシウムチャネルに及ぼす揮発性麻酔薬の影響
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09771152
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
榎 泰二郎 京都大学, 大学院・医学研究科, 助手 (20273443)
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Keywords | 揮発性麻酔薬 / イソフルレン / ラット / 大動脈 / カルシウム・チャネル / フェニレフリン / 血管平滑筋 |
Research Abstract |
平成9年度においては、ラット摘出大動脈を用い、血管の等尺性収縮の測定と放射性同位元素(^<45>Ca^<2+>)によるトレーサー実験を行った。電位依存性カルシウムチャネルの影響を除去するため、すべての実験を充分量のニフェジピンの存在下で行った。 等尺性収縮の測定においては、イソフルレンはフェニレフリンで前収縮させた血管の張力を増強させた。このイソフルレンによる収縮は、リアノジンによって細胞内貯蔵カルシウムを枯渇させても再現されたが、カルシウムイオンを除去した栄養液下では消失したことから、細胞外液からのカルシウム流入によるものと考えられた。さらに、イソフルレンによる収縮が受容体作動性カルシウムチャネル(ROC)の遮断薬であるSK&F96365により消失したことから、イソフルレンはROCの活性を高めることによって収縮を引き起こしていると考えられた。 ^<45>Ca^<2+>によるトレーサー実験では、イソフルレンはフェニレフリンにより活性化したカルシウムの流入をさらに増強した。この流入はニフェジピン存在下で発生するものであることから、電位依存性カルシウムチャネルではなく、ROCを介するものであることが示唆された。フェニレフリン非存在下で、イソフルレン単独では有意なカルシウム流入を生じなかった。 以上の結果から、イソフルレンはフェニレフリンによるROCの活性化を増強し、そこからのカルシウム流入を促進することが示唆された。この知見はこれまで報告されていないものであり、揮発性麻酔薬の血管作用の機序の解明に寄与するものであると考える。この成果は現在、British Journal of Anaesthesiaに投稿中である。
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