1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09771192
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
小高 桂子 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (30203532)
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Keywords | 人工赤血球 / 心筋保護液 / 人工心肺 |
Research Abstract |
本年は前年度に引き続き、人工赤血球を混和させた心筋保護液を使用し、従来の心筋保護液(GIKなど)と比較して、大動脈遮断中の心筋代謝に及ぼす効果を実験的に検討した。研究経過中、両群間において、乳酸/ピルビン酸比には有意差はみられなかった。心筋乳酸摂取率、心筋酸素摂取率は、両群とも大動脈遮断解除直後に有意に低下したが、人工心肺離脱30分後には回復し、群間に有意差は生じなかった。CK-MBにおいても、遮断解除後、両群共有意に上昇し、群間で有意差無く、同様の経過を示した。一方、高エネルギーリン酸は、人工心肺中から大動脈遮断解除直後にかけて、人工赤血球群では人工心肺前と比較してATP、ADPが保持されているのに対し、GIK群では、有意な低下を示した。人工心肺離脱30分後には、両群とも有意に低下した。この低下は、離脱後の出血などによる血行動態の不安定や血液ガスの不良によるものと思われた。一般的に、心筋代謝の測定には、従来より冠静脈洞血の乳酸、ピルビン酸値の測定などによって評価されてきたが、本研究では、血液からの心筋代謝と、心筋細胞からの心筋代謝の測定では結果を異にしていた。これは、低体温、人工心肺という特殊環境により、心筋代謝の測定値が、全身の代謝の変化の影響を受けたためかもしれない。今回の研究結果から、心筋細胞のエネルギー代謝の面からは、低温下でも酸素運搬能の優れた人工赤血球を混和した心筋保護液により、好気的心筋代謝が保持され、大動脈遮断中の心筋傷害が軽度になる可能性があることが示唆された。今後は、大動脈遮断時間を延長させ、その心筋保護効果の差を確認し、さらには実際の血液を混和した心筋保護液(blood GIK)と人工赤血球混和液においての比較も行って、有用性を確認していきたいと考えている。
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