1997 Fiscal Year Annual Research Report
子宮体癌の筋層内浸潤におけるメタロプロティナーゼとその制御因子の役割
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09771315
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
成宮 尚男 愛知医科大学, 医学部, 助手 (10257694)
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Keywords | MMP-9 / TGF-β_1 / 子宮体癌 / 筋層内浸潤過程 |
Research Abstract |
【目的】子宮体癌由来株のin vitro浸潤能とMMP-9の発現が相関することを平成8年度の研究実績として報告している.TGF-β_1は蛋白分解酵素の産生を抑制する因子の一つであり,MMP-9の発現を制御すると考えられる.本研究では,浸潤能の異なる子宮体癌由来株細胞のMMP-9活性および浸潤能に及ぼすTGF-β_1の効果を検討するとともに,子宮体癌症例についてMMP-9,TGF-β1の血中値,組織内発現を筋層浸潤度別に比較した. 【方法】子宮体癌由来株(Ishikawa,KLE)および子宮体癌18例(Ib期群:8例,Ic期群:10例)の血清,血漿,癌組織のパラフィン包埋切片を材料とした.株細胞の浸潤能はMatrigel invasion chamberを用いて測定し,MMP-9活性はgelatin zymographyで検出した.MMP-9,TGF-β_1の血中値はEIA法で測定し,組織内発現はABC法で検出した. 【成績】(1)株細胞のMMP-9活性と浸潤能は,ともにIshikawa株に比べKLE株で高かった.また,KLE株ではTGF-β_1の添加により濃度依存性にMMP-9活性と浸潤能の亢進が認められたが,Ishikawa株ではTGF-β_1を添加してもMMP-9活性,浸潤能とも変化がなかった.(2)血中MMP-9値,TGF-β_1値はIb期群に比べIc期群で有意の高値を示し,MMP-9値,TGF-β_1値の間には有意の正の相関性を認めた.(3)MMP-9は腫瘍細胞に,TGF-β_1は主として間質に局在し,両者の同時組織内発現の頻度はIb期群に比べ,Ic期群で有意に高かった. 【結論】子宮体癌の筋層内浸潤には,間質で産生されるTGF-β_1の増加に伴うMMP-9活性の亢進が関与する.また,子宮体癌症例において,MMP-9とTGF-β_1の血中値は筋層浸潤度を推定する指標となりうる.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 成宮尚男: "卵巣癌における血中Matrix metalloproteinase(MMP)値、Tissue inhibitor of metalloproteinase(TIMP)値の腫瘍マーカーとしての有用性" 日産婦誌. 49・10. 789-796 (1997)
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[Publications] 成宮尚男: "卵巣癌転移、播種過程におけるMatrix metalloproteinase-9(MMP-9),Tissue inhibitor of metalloproteinase-1(TIMP-1),TGF-β_1,IL-6発現の検討" 愛知医大誌. 25. 329-335 (1997)