Research Abstract |
全層角膜移植後の良好な術後視力を得るためには,術後に生じる乱視を軽減させることが重要である。移植角膜片のサイズ,縫合糸の種類,縫合方法,抜糸の時期および抜糸本数と術後乱視量との相関をレトロスペクテイブに検討した結果,これらが術後乱視を軽減させるための重要な因子であることが明らかになった。(既報) 実際に,これらの因子を考慮して円錐角膜に全層角膜移植術を施行した10眼について,その有用性,有効性についてプロスペクテイブに検討した。対照を移植術後5年以上経過した症例とした。その結果,術後6ヵ月から1年後に,平均約2.95± 0.88Dの乱視が存在し,対照の平均5.27±1.99Dに比較して有為に術後乱視が軽減していた。 さらに,残余乱視を軽減させるために以下の乱視矯正方法を試みた。対象は,円誰角膜に全層角膜移植術を施行した5例5眼で,術後1年以上経過を観察し,抜糸による乱視矯正後も平均3.0D以上の角膜乱視が残余した症例である。方法は,強主経線に一致した部位に,角膜厚の50%から70%の深さを目標に移植片と並行に約3.0mmの切開を加えた。切開には切開深度をμm単位で微調節可能なダイアモンド刃を用いた。尚,最も効果的な切開部位,切開深度,切開幅,切開本数,切開から切開迄の期間を知るために,術後翌日,3日,7日,14日,以後は月毎に,視力,眼圧,角膜形状と曲率半径,様々な角膜内皮のパラメーターの測定を行った。データーの詳細に関しては未検討であるが,5例中3例で有効な乱視量の軽減が得られた。今後,データーを蓄積,解析して,さらに詳細な検討を行う予定である。
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