1998 Fiscal Year Annual Research Report
抗菌剤を含む試作リン酸カルシウムセメントによる象牙質の再石灰化と歯髄の消炎効果
Project/Area Number |
09771631
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
井口 由利 九州歯科大学, 歯学部, 助手 (50232575)
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Keywords | リン酸カルシウムセメント / 消炎効果 / 再石灰化 / チモール |
Research Abstract |
抗菌剤を含む試作リン酸カルシウムセメントによる象牙質の再石灰化と歯髄の消炎効果を検討している。 その結果、抗菌剤を含まないリン酸カルシウムセメントの場合には初期において桿状体の出現が著名であり炎症の存在を認めた。長期観察例においてはリンパ球、形質細胞を主とする炎症性細胞の浸潤と毛細血管のうっ血を認めたが、修復象牙質の生成は認められなかった。一方、抗菌剤を含むリン酸カルシウムセメントの場合には初期において象牙芽細胞の退行変性を認めるものの炎症をほとんど認めず、長期観察例においては修復象牙質の生成と形質細胞を主とする炎症性細胞の浸潤による慢性炎症の存在を認めた。抗菌剤を含むか否かに関らず、短期、長期例の炎症の程度はシリケートセメントより小さかった。以上の結果から、抗菌材(チモール)は、処置後比較的初期の間に炎症を抑えるような効果を発揮するのではないかと推察された。 細胞毒性試験の結果では、ユージノールセメントがもっとも強い毒性、シリケートセメントが顕著な毒性を示し、リン酸カルシウムセメントの場合には抗菌剤を含む場合も含まない場合にも毒性を示さないことがわかっている。また、抗菌剤を含んだリン酸カルシウムセメントは齲蝕原性菌に対して抗菌性を示すことがわかっている(IADR abst#2526)。 これらの結果と今回の結果から、抗菌剤を含んだリン酸カルシウムセメントの場合には、比較的初期に歯髄の炎症を抑えつつ修復象牙質の生成を促すような働きがあるのではないかと示唆された。
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Research Products
(1 results)