1997 Fiscal Year Annual Research Report
在宅の大腿骨頚部骨折高齢者の予後に影響する健康観・介護観の調査
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09772106
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Research Institution | Nagano College of Nursing |
Principal Investigator |
征矢野 あや子 長野県看護大学, 看護学部, 助手 (20281256)
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Keywords | 大腿骨頚部骨折 / 老人看護 / 家族 / 介護者 / 退院指導 |
Research Abstract |
家族の関わりや退院指導が大腿骨頚部骨折後の高齢者の生活に及ぼす影響について調査、検討した。対象は、大腿骨頚部骨折による退院後3〜5ヶ月の高齢者16名とその同居家族9名で、半構成的面接調査を実施した。骨折高齢者への質問項目は、骨折をきっかけに家族から助言されていることとADL評価(受傷前および退院後3〜5ヶ月時点の老研式活動能力指標、生活範囲尺度)である。家族には、骨折高齢者の再転倒、再骨折、および寝たきりを予防するために注意していることについて質問した。 家族からの制限の有無別に両群を比較したところ、以下の結果が得られた。 (1)制限無しは9例、有りは7例であった。制限の主な内容は、(1)階段昇降、(2)屋外に出る、(3)自宅周囲より遠くへの散歩、(4)畑仕事、家事などであった。(2)制限有り群は無し群に比べて高齢であった。(3)生活範囲尺度、老研式活動能力指標において、制限有り群は無し群に比べ、退院後のスコアが有意に低下していた。一方、制限無し群では、生活範囲を維持していたものが9例中4例、拡大したものが1例みられた。(4)16例中15例の骨折高齢者および家族が、「退院後の生活について具体的な指導を受けていない」あるいは、「転ばないようにとだけ言われた」と答えていた。 家族による骨折高齢者の生活上の行動制限の有無が、ADLや生活範囲の縮小に関連していることが示唆された。その中には畑仕事、家事など高齢者の役割や楽しみの喪失につながるものもある。家族の骨折高齢者への助言は必ずしも能力、危険の程度に見合ったものではなかった。退院時、家族は具体的な方法を示されないまま「転ばせないように」とだけ指導されており、家族の不安をあおっていることが原因のひとつと考えられる。以上から、(1)患者の能力に見合った生活動作、生活範囲の維持に関する具体的な指導、(2)家族の不安を軽減するための指導が必要と考える。
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