1997 Fiscal Year Annual Research Report
重粒子線による突然変異誘発と染色体損傷との相関性に関する研究
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09780499
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
鈴木 雅雄 放射線医学総合研究所, 第3研究グループ, 研究員 (70281673)
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Keywords | 重粒子線 / 炭素イオンビーム / LET / 突然変異 / RBE / PCC / クロマチン切断 |
Research Abstract |
X線やガンマ線のような電磁波放射線とはそのエネルギー付与構造の点において、根本的に異なるタイプの重粒子線によるヒト培養細胞の突然変異誘発効果の特性を、細胞レベルの応答として突然変異誘発頻度の線質依存性(重粒子線とX線による違い、重粒子線におけるLET依存性)を調べ、また染色体・クロマチンレベルの応答として放射線損傷の修復性とその結果生じた遺伝的に安定に保持される染色体・クロマチン損傷(修復後になおも存在している細胞を死に至らしめない損傷)誘発の線質依存性を調べ、細胞レベル、染色体・クロマチンレベルの両者の生物効果の関連性の観点から、重粒子線による突然変異誘発のメカニズムを明らかにすることを目的とする。平成9年度においては、放射線医学総合研究所の重粒子線がん治療用装置(HIMAC)によって加速された複数のLETの炭素イオンビームと200kVのX線による、(1)ヒト正常細胞のHPRT遺伝子座の突然変異誘発効果の線量効果関係、(2)早期染色体凝縮法PCC法)を用いてG1期の細胞における修復されないクロマチン切断誘発の線量効果関係修復性、を検討した。 まず、ヒト正常細胞における生き残った細胞あたりの突然変異誘発効果の線量効果関係から、誘発頻度はX線よりも炭素イオンビームの方が高く、炭素イオンビームでもLETの高い方が誘発率が高いことがわかった。10x10^<-6>の突然変異誘発率を与える点でのX線に対するRBEの値は、77keV/μmの炭素イオンビームが3.8、13keV/μmの炭素イオンビームが1.4であると算定した。次に、PCC法で求めた修復されないクロマチン切断誘発効果のLET依存性は、突然変異と同様炭素イオンビームのLET値が高くなるにしたがって誘発頻度は高くなり、X線に対して77keV/μmの炭素イオンビームで4.8倍、l3kcV/μmの炭素イオンビームで2.2倍高頻度であることが判った。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] M.Suzuki,M.Watanabe,T.Kanai,Y.Kase,F.Yatagai,T.Kato and S.Matsubara: "LET-dependence of cell death, mutation induction and chromatin damage in human cells irradiated with accelerated carbon ions" Advances in Space Research,. 18(1/2). 127-136 (1996)
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[Publications] M.Suzuki,Y.Kase,T.Kanai,F.Yatagai and k.Ando: "LET-dependence of cell death and chromatin-break induction in normal human cells irradiated by neon-ion beams" International Journal of Radiation Biology. 72. 497-503 (1997)