1998 Fiscal Year Annual Research Report
ホルマリン固定標本を用いた絶滅種・希少種のDNA分析による系統類縁解析の試み
Project/Area Number |
09839032
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
井田 齊 北里大学, 水産学部, 教授 (90050533)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朝日田 卓 北里大学, 水産学部, 講師 (00296427)
林崎 健一 北里大学, 水産学部, 講師 (80208636)
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Keywords | 絶滅種 / 希少種 / DNA抽出 / mtDNA / PCR / ホルマリン固定標本 / プロティナーゼK / ハイドロキシアパタイト |
Research Abstract |
絶滅種・希少種の系統を解析する目的で,ホルマリン固定されて長期間保存された魚類標本からのDNA抽出法およびDNA多型の解析手法に関して検討を行った。 DNA抽出に関しては(1)組織の物理的粉砕,(2)組織溶解に先立つホルムアルデヒドの不活化処理,(3)プロティナーゼKによる組織溶解の条件の最適化,(4)組織溶解液からのDNAの回収条件の最適化の4点に関して前年度に引き続き手法の改良を行った。その結果(1)物理的な衝撃は最小限にとどめるのがよく,(2)トリス・グリシンバッファーの処理法を工夫して短時間で効率的にホルムアルデヒドの除去が可能となるようプロトコルを改変した。(3)DTT添加した4M尿素を含むバッファーを用いて高温でプロティナーゼKの連続添加が最適であった。(4)回収されたDNAの収量とその精製度がPCR反応の可否に大きく影響した。エタノール沈殿等の回収法では精製度は低く,シリカマトリックス等を用いた精製では収量が極めて少なかった。しかしハイドロキシアパタイトを用いたDNA回収ではシリカマトリックスを用いた場合に匹敵する精製度が得られ,かつDNA収量も多く好成績であった。 mtDNAのチトクロームb領域の一部のPCR増幅を行ったところ,10から20年前のシロザケ標本に関しては500塩基対までの増幅が可能であった。PCR反応によるDNA増幅の長さには回収されたDNAの状態により限度が異なると考えられ,リュキュウアユ,クニマス等の特に古い標本ではmtDNAの約500塩基対の増幅も可能ではなかった。本研究では情報の蓄積の多いmtDNAに注目した。しかし,核DNAのマイクロサテライト領域では,解析にせいぜい500塩基対までといった短い断片が解析に用いられることから,長鎖のPCR増幅が困難であるホルマリン標本を用いた系統解析,特に近縁種間の系統解析にはマイクロサテライト解析を行うことが有効であると考えられ,現在解析中である。
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