1998 Fiscal Year Annual Research Report
ボレリア細菌の地理的隔離による多様化とマダニへの適応進化
Project/Area Number |
09839038
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Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
福長 将仁 福山大学, 薬学部, 教授 (20132483)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 幸江 福山大学, 薬学部, 助手 (40236328)
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Keywords | ボレリア / マダニ / ベクター / 系統解析 / 適応進化 |
Research Abstract |
地理的隔離により生物が適応進化することが知られている。本研究ではライム病ポレリアと媒介マダニが隔離状態において共進化していることを明らかにした。すなわち、北海道と長野の2地点で捕獲したマダニについてリボソームRNA遺伝子間配列(ITS2)領域とミトコンドリアリボソームRNA遺伝子塩基配列を比較、寄生ボレリアでは鞭毛蛋自遺伝子ならびに菌体表層蛋白遺伝子の塩基配列をそれぞれ比較して、2地点間における両生物種の遺伝的変化について定量的に検討した。 その結果、ボレリアの鞭毛蛋白遺伝子ならびに菌体表層蛋白遺伝子の塩基配列についてそれぞれ両地域に特徴的な遺伝グループが認められ、あわせて媒介マダニのミトコンドリア遺伝子についても地域特異的な遺伝グループが存在し、両生物がそれぞれの地域に適応進化していることが裏付けられた。さらに遺伝子の変異率は、マダニのそれに比較してボレリア細菌で高く、高い変異率を持つボレリア細菌がマダニの変異進化に適応しながら変化していることが推察された。 ボレリア細菌はマダニの吸血行動にともなって小型脊椎動物とマダニ体内を行き来しながら生活する生物である。このうち小型脊椎動物は種類を問わず保菌動物となることが出来るので、ボレリアの感染はマダニの性質に深く関わっていると考えられ、ボレリアの生存はマダニへの適応が必須条件となる。本研究で明らかにした事実はボレリアが変異多様化することは、地理的隔離により地域に適応進化していくマダニに適応するためであることを証明している。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 福長将仁 ほか: "Competence of a migratory bird,red-bellied thrush(Turdus chrysclaus),as an avian reservcir for the Lyme disease spirochetes in Japan" Acta Tropica. 65(1). 43-51 (1997)
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[Publications] 福長将仁 ほか: "Borrelia recurrentis characterization and comparison with relapsing-fever,Lyme associated,and other Borrelia spp." International Journal of Systematic Bacteriology. 47(4). 958-968 (1997)
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[Publications] 福長将仁 ほか: "Rapid diagnosis,of Lyme disease:Fiagellin gene-based nested polymerase Chain reaction for identification of causative Borrelia species" International Journal Infections Piseases. 2(1). 64-73 (1997)
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[Publications] 福長将仁 ほか: "Culture-positive Lyme borreliosis" The Medical Journal of Australia. 168(10). 500-502 (1998)
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[Publications] 小田有二,福長将仁: "rRNAスペーサ領域に基づく微生物の同定と系統分類" 化学と生物. 36(1). 7-8 (1998)
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[Publications] 福長将仁: "Borreliaの生態とライム病の分子疫学" 日本細菌学雑誌. 54(2)(印刷中). (1999)