1997 Fiscal Year Annual Research Report
子どもの虐待に対応するための制度的基盤に関する研究
Project/Area Number |
09872003
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
中元 尚紀 鹿児島大学, 法文学部, 助教授 (10264459)
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Keywords | 子ども / 自己決定 / 自己責任 / 虐待 |
Research Abstract |
本年度は,法理論的な観点からの基礎研究を中心に行った.すなわち,現時点までに心理学的に解明されている・生身の人間の「意思」ないし「自己決定」というものを,現行法体系において想定されている「意思」ないし「自己決定」と対比しつつ,現行法体系が生身の人間のありようとより整合的であるためのいくつかの提言を行った.この研究は,人間の「意思」ないし「自己決定」が,たとえ心神耗弱・喪失または未成年の状態にない者であっても,何らかの形で条件づけられていることもあるのであり,そのような生身の人間の「意思」ないし「自己決定」を念頭に置くことにより,ひいては子どもの「意思」ないし「自己決定」に対して法体系上与えられるべき地位研究の前提となるものである.子どもの虐待に対応するための制度を検討するにあたっては,子どもの「意思」や「自己決定」の可能性と限界を見極める必要があり,本年度はかような基礎的作業を中心に行ったということになる.と同時に,本年度は,女性に対する暴力に関しても,知見を深めることを行った.ここ数年,女性に対する暴力が社会的に注目されつつあるが,女性に対する暴力も,子どもの虐待と類似の原因から生じること多いと理解されている.だとするならば,特に虐待者の処遇については,両者に共通するものを見いだしうるのであり,この点に関してアメリカにおける動向を検討中である.また,子どもの虐待も女性に対する暴力も,その大半は公的には把握されていないと考えられており,現時点ではこの実態調査を行うことも検討中である.
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