1998 Fiscal Year Annual Research Report
子どもの虐待に対応するための制度的基盤に関する研究
Project/Area Number |
09872003
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
中元 尚紀 鹿児島大学, 法文学部, 助教授 (10264459)
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Keywords | 子ども / 虐待 / ドメスティック・バイオレンス / PTSD / 損害賠償 |
Research Abstract |
本年度の成果は、次ぎの諸点である。第一に、PTSDに対する損害賠償責任に関する研究を行った。現時点の日本において、立法によってアメリカにも比するような子どもの虐待に対応するためのシステムをハード面から構築することは、きわめて困難である。そのような状況下で、子どもの虐待に対応するための制度的基盤を構築しようとするにあたっては、直接的な虐待への介入にとどまらず、むしろ様々な間接的な虐待防止スキームを検討する必要がある。例えば、親権喪失宣告の積極的な利用は、そのような目的に資する。管見の限り、近年、親権喪失宣告を得るための手引きのような著作が複数刊行され、それらを参考にしながら親権喪失宣告が獲得されつつある。このような認識に基づき、このような間接的な虐待防止スキームとして今年度検討したのが、虐待親の損害賠償責任である。暴力そのものによる損害よりも、虐待によって惹起されるPTSDについての損害賠償責任を検討したのは、それが虐待防止・救済に向けて、より重要性が高いと判断したからである。さらに、子どもの虐待と同質の問題として、ドメスティック・バイオレンスがあるが、PTSDに対する損害賠償責任は、ドメスティック・バイオレンスにおいても等しく活用されうる。本研究はまだ出版されていないが、5、6月頃には出版される予定である。 第二に、ドメスティック・バイオレンスに関するパンフレットの作成を行い、試験的にそれを配布した。地方によっては、女性センターや弁護士会がそのようなパンフレットを作成・配布しているが、鹿児島県ではそのような活動はなされていない。女性一般に救済手段を周知することはきわめて緊急性・重要性が高い。ごく限定的な範囲においてではあるがそれを行った。 ちなみに、虐待防止ネットワークの構築についてはまだ不充分であり、来年度も引き続きこの課題に取り組み、一定の成果をあげたいと考えている。
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