1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09874123
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
楠見 武徳 徳島大学, 薬学部, 教授 (70015882)
|
Keywords | 磁場と化学 / 異方性効果 / 磁化 / NMRスペクトル / 誘起磁場 |
Research Abstract |
本研究は極めて強い磁場中におかれた有機分子が、その分子形をどのように変化させるかを知るためのものである。例えば、環状に連結したπ電子系を有するベンゼン環は、強磁場中におかれると誘起磁場を発生する。この誘起磁場はNMRスペクトルにおいて異方性効果として観測することができる。このような誘起磁場を発生する官能基は磁場中で磁化していると見なすことができる。複数個のベンゼン環を有する有機化合物では、磁化したベンゼン環同士が磁気的な相互作用をすることにより分子形(コンホメーション)の変化をもたらすことが期待される。 本年度は、本研究に最も最適である化合物のデザインを行い、モデル化合物を合成することを行った。シス-スチルベンにジメチルカルベンを作用させ、1,1-dimethyl-2,3-cis-diphenylcyclopropaneを合成した。この化合物中では、隣り合った2個のベンゼン環が強制的に面と面が重なるように配置しており、ベンゼン環の磁化により2個のベンゼン環の方向が強磁場中と無磁場中とでわずかに異なる可能性がある。 この化合物中には4級メチル基が2個あり、それらは磁気的に非等価である。すなわち2個のメチル基は化学シフトが異なる2本の鋭い単一線を示す。化学シフトはベンゼン環の異方性効果に大きく支配されるので、2本のシグナルの化学シフトの差は、磁場強度に相関して変化するはずである。 合成した化合物のプロトンNMRスペクトルを200,400,500,600MHz NMR装置を用いて測定した。化学シフトは温度の影響を受けるため、各装置のプローブ内の温度を完全に等しくしなければならない。そのため、5mm NMRサンプル管に挿入できる特製のミクロ温度計を作製し、同一の温度計を用いて各装置の温度差をなくすことに成功した。現在、こうして得られたデータの解析を行っている。
|