1997 Fiscal Year Annual Research Report
マツノザイセンチュウ類の病原性分化に関する基礎研究
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09876041
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
二井 一禎 京都大学, 農学研究科, 助教授 (50165445)
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Keywords | マツ材線虫病 / 発育ゼロ点 / 病原力 / 体長・体型 / ITS領域 / アイソレイト / 被害分布 / 森林流行病 |
Research Abstract |
マツ材線虫病、いわゆる″マツ枯れ″の病原体マツノザイセンチュウは今から1世紀程前に北米より侵入したと考えられている。九州を皮切りに広がったこの森林流行病は現在では本州の北端近くまで被害分布を広げるに至った。この間、この線虫は絶えず分布域の先端で新たな環境条件への適応を果たしてきたはずで、その大きな増殖力を考慮すると既に様々な種内変異を遂げていることが想定される。そこで、日本各地から採集した9つのアイソレイトを対象に種内変異の有無を調査することにした。まず、DNA上に生じている可能性のある変異を明らかにするためリボゾームDNAのITS領域の塩基配列を比較したところ、これら9つのアイソレイト間には全く変異が生じていなかった。つぎに、分布拡大に伴い病原線虫が遭遇することが想定される環境条件の変化のうち温度に着目して各アイソレイトの発育ゼロ点と病原力発揮に及ぼす温度の影響を比較したところアイソレイト間に変異が見出された。しかし、その差は採集地の環境温度を反映していなかった。さらに、これらアイソレイト間には体長・体型上にも変異が生じていることが明らかになった。このように、DNA上には変異は発見されなかったものの生理的形質や形態上に種内変異が生じていることが明らかになった。これらの変異は現在までのところランダムに発生しているようで、まだそれぞれの分布域に適応的になるまでの淘汰は受けていないが今後の時間経過の中で適応を遂げていくものと考えられる。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Iwahori,H.et al.: "PCR-RFLP and sequencing analysis of ribosomal DNA Bursaphelenchus nematodes related to pine wilt disease" Fundamental and Applied Nematology. (in press).
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[Publications] Hata,K, Futai,K. and Tsuda,M.: "Seasonal and needle age-dependent changes of the endophytic mycobiota in Pinus thunbergii and Pinus densiflora needle" Canadian Journal of Botany. (in press).
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[Publications] Asai,E, Hata,K, Futai,K. and Tsuda,M.: "Effect of simulated acid mist on the occurrence of Leptostroma on Pinus thunbergii needles." Mycological Research. (accepted).
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[Publications] Maehara,N. and Futai,K.: "Effect of fungal interactions on the numbers of the pinewood nematode,Bursaphelenchus xylophilus,carried by the Japanese pine sawyer" Fundamental and Applled Nematology. 20・6. 611-617 (1997)
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[Publications] Aikawa,T.et al.: "A simple method for loading adult Monochamus alternatus with Bursaphelenchus xylophilus" Applied Entomology and Zoology. 32・2. 341-346 (1997)