Research Abstract |
本研究はクラミジアの慢性潜伏感染による疾患に対して,その予防あるいは治療に使用し得る薬剤の同定と作用機序の解明を目的とする。 平成9年度はトラニラストの抗クラミジア作用について,各種細胞を用いin vitroで最小発育阻止濃度を検討し,選択性,形態学的変化について検討した。 まず,C.pneumoniae (C.pn)標準株や臨床分離株をHEp-2細胞,HeLa細胞,マクロファージ,ヒト血管内皮細胞,ヒト動脈平滑筋細胞などに感染させ,トラニラストのC.pn増殖抑制効果をみたところ,いずれの細胞に感染させたC.pnに対しても30〜50μg/mlのMICを示した。 一方,選択性について一般菌では,S.aureus, S.pneumoniae,K.pneumoniae, P.aeruginosa, E.coli, S.marcescens, S.epidermidis, C.freundii, E.cloacae, M.morganii, P.mirabilis, P.cepatia, S.typhimuriumについて,またMycoplasma pneumoniae, Legionella pneumophila,真菌,抗酸菌,Helicobacter pyloriについてもMICを測定した。トラニラストは以上の検討した微生物のうちH.Pylori (50μg/ml)を除く全てのものに対して100,または256μg/mlでも増殖抑制を認めなかった。 電子顕微鏡での観察はC.pn感染後8〜18時間に2MICの濃度のトラニラストを添加し経時的に行ったところ,薬剤添加時点で網様体の増殖が完全に抑制されていることが観察された。したがってトラニラストは細胞内でのクラミジアの増殖の時期に,なんらかの阻害効果を示すものと思われた。現在さらに他の抗アレルギー剤についても検討中である。
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