1997 Fiscal Year Annual Research Report
抗うつ薬作用機序の分子生物学的研究-三環系抗うつ薬と甲状腺剤併用の増幅効果から
Project/Area Number |
09877181
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
渋谷 治男 東京医科歯科大学, 医学部, 助教授 (10158959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
融 道男 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (20013972)
渡辺 明子 東京医科歯科大学, 医学部, 技官(教務職員) (40210992)
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Keywords | 難治性うつ病 / 抗うつ薬 / 甲状腺ホルモン / Augmentation Therapy / ノルアドレナリン / セロトニン / β-受容体 / 強制水泳テスト |
Research Abstract |
内因性うつ病の15-30%は大量の抗うつ薬投与にもかかわらず難治であり、症状は遷延しうつ病治療の大きな問題になっている。このような症例に抗うつ薬と共に、甲状腺ホルモンを投与すると抑うつ症状の改善を認めることが多い。甲状腺ホルモンと抗うつ薬の併用投与で作動する脳内機序こそが、うつ病の修復機序と考え、三環系抗うつ薬、甲状腺ホルモンをラットに投与して動物行動と脳内アミンと受容体への影響を比較検討した。 【方法】 Wistar系雄性ラットを用いた。薬物投与:DMI : 10mg、30mg/kg、T3 : 0.1mg.1mg/kg、DMIとT3の併用:(10mg/kg+0.1mg/kg)(30mg/kg+1mg/kg)強制水泳テスト、Open fieldテストを施行した。脳内モノアミンの測定:薬物を単回あるいは反復投与した後、脳を取り出し前頭葉皮質(PF)、線条体(STR)、視床下部(HY)、海馬(HIP)の4部位に分けて測定した。β受容体結合実験:リガンドには30nM[3H]CGP127177を、ディスレーサーには30μMアルプレノロールを用いた。 【結果】 1.遷延性うつ病者に甲状腺末と抗うつ薬を併用投与すると、著効55%、有効18%、無効18%、悪化9%であった。 2.強制水泳テスト:単回投与でDMI(30mg/kg)群とDMU+T3 (30mg/kg^<+1>mg/kg)群の2群で対照群に比較して無動時間の短縮をみた(61%,53%に減少)。7日間の反復投与ではDMI+T3群でのみ有意な差を認めた(59%に減少)。 3.脳内モノアミン:反復投与7日間のNE代謝はDMI+T3併用群のPFで有意な増加をみた。5HT代謝については併用群およDMIの両群で視床下部の5HIAAの減少を認めた。DA代謝には大きな変化はなかった。 4.β受容体結合実験:反復7日間の投与でDMI群のPF,HY,HIPの結合量が減少していた。一方、併用投与群においては、PF,HY,HIPのβ受容体結合量は対照群と差がなかった。 【考察】 抗うつ作用の指標になる強制水泳テストにおける無動時間の短縮は、DMI+T3群の7日間の反復投与で有意な短縮を認め、甲状腺ホルモンが抗うつ薬効果を増幅する所見を動物実験でも得たこの短縮効果をNEあるいはβ受容体レベルだけで説明することはできなかった。抗うつ薬と甲状腺ホルモンの増幅効果を細胞内情報伝達系レベルで調べる必要があると考える。
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Research Products
(1 results)