Research Abstract |
本年度は,ハイリスク新生児に対する直接母乳と看護者の哺乳ビンによる授乳場面を観察し,児の哺乳行動と生理学的変化について分析した.【対象】国立岡山病院のNICUに入院中のハイリスク新生児3名とその母親.【方法】 1.同一児に,直接母乳と看護者の哺乳ビンによる授乳を行い,哺乳中の児の脈拍数,SpO_2,体温を,患者監視装置NEXTBP-88で15秒間隔で測定し,両者を比較した.2.授乳場面をビデオ撮影し,録画の詳細な記述をコーディングした後,(1)哺乳中の児の行動状態,(2)母親(看護者)と児の顔の距離,(3)母親(看護者)の語りかけの回数,(4)母親(看護者)のTOUCHING時間について比較した.分析は,統計ソフトSPSSを用い,Mann-WhitneyU検定,T検定を行った.【結果】 1.3組の授乳時間は,直接母乳が平均34分20秒で,哺乳ビンは平均11分であった.2.看護者の哺乳ビンによる授乳は,直接母乳より脈拍数が増加し(事例(1)(3)),体温が上昇した(事例(1))(p<0.05).3.直接母乳の録画分析から,授乳場面におけるハイリスク新生児の運動システム(31項目),注意・相互作用(12項目),生理学的変調(10項目),行動の状態(14項目),及び16項目からなる母親の授乳行動リストを作成した.これをもとに,相互作用過程の量的分析を行った.4.事例(1)の場合,直接母乳の方が,母親の語りかけが頻回で,TOUCHING時間が長かった(p<0.05).授乳中に,母親は児の反応を見ながら,覚醒させ,吸啜を促す多様な刺激を与えていた.5.事例(1)(2)の,母親(看護者)と児が目と目を合わす顔の距離は,直接母乳を与えている母親の方が有意に接近していた(p<0.05).以上のことから,直接母乳は,看護者の哺乳ビンによる授乳と異なった児の哺乳行動と生理学的変化を生じさせたと言える. 今後,栄養を与えるための母親の情緒的なかかわりと,児の哺乳行動との関連性を明らかにしていきたい.
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