1997 Fiscal Year Annual Research Report
ホスホリパーゼDによる負電荷産生の細胞内輸送に及ぼす影響
Project/Area Number |
09878159
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
本間 桂一 東京工業大学, 生命理工学部, 助手 (50282851)
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Keywords | PI(4)P5キナーゼ / mss4 |
Research Abstract |
PI(4,5)P_2は種々の細胞プロセスを制御する因子であるので、この脂質を合成する酵素であるPI(4)P5キナーゼおよびPI(5)P4キナーゼを研究することは重要と考えられる。当研究は、出芽酵母でPI(4,5)P_2合成酵素をコードする遺伝子であると考えられているMSS4を対象にした。まず3HAタグを導入したMSS4遺伝子産物を抗HA抗体を用いて免疫沈降し、PI(4)Pを基質として活性測定した結果、PI(4,5)P_2が産生されることが明らかになった。またmss4-1温度感受性変異株で同様に活性を測定したところ、制御温度下で培養した場合は許容温度で培養した場合に比べPI(4,5)P_2の産生が減少することを見いだした。これらはMSS4遺伝子産物がPI(4)P5キナーゼ活性を有し、温度感受性株では活性が低下していることを示唆するが、基質に含まれた微量のPI(5)PがPI(5)P4キナーゼ活性によりPI(4,5)P_2が産生されたという可能性も残る。しかしさらにこの研究ではMSS4遺伝子産物のキナーゼ活性が50μMのホスファチジン酸存在下で活性化されることを発見した。PI(4)P5キナーゼはホスファチジン酸によって活性化されるがPI(5)P4キナーゼは活性化されないので、MSS4遺伝子産物はPI(4)P5キナーゼ活性を有すると考えられる。また必須遺伝子であるMSS4はマウスのPI(4)P5キナーゼ遺伝子により相補されるが、ヒトのPI(5)P4キナーゼ遺伝子によっては相補されないことも判り、この結論を支持した。 MSS4遺伝子産物は既報の通り細胞膜に局在し、またmss4-1温度感受性変異株は制限温度下では形態とアクチン局在の異常を示す。この観察と本研究の結果は、細胞膜上でのPI(4)P5キナーゼ活性を持つMSS4遺伝子産物によるPI(4,5)P_2の産生が、アクチンによる形態形成を制御する可能性を示唆する。このように当研究は、新たなシグナル伝達系を研究する端緒となったと考えられる。
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