1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09CE1001
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
安田 喜憲 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (50093828)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北川 浩之 国際日本文化研究センター, 研究部, 助手 (00234245)
外山 秀一 皇學館大学, 文学部, 助教授 (50247756)
高橋 学 立命館大学, 理工学部, 教授 (80236322)
佐藤 洋一郎 静岡大学, 農学部, 助教授 (20145113)
徐 朝龍 国際日本文化研究センター, 研究部, 助教授 (80235811)
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Keywords | 長江文明 / 環境考古学 / 稲作の起源 / 稲作文明 / 三星堆遺跡 / 龍馬古城宝〓遺跡 / 古気候変動 / モンスーン変動 |
Research Abstract |
1)成都平原とチベット高原の調査研究 平成9年10月-11月の間、四川連合大学長江文明研究センターと共同で、成都平原とチベット高原の環境考古学的調査研究を実施した。昨年以来調査を継続中の三星堆遺跡・龍馬古城宝〓遺跡などの衛星写真画像解析、環境考古学的調査・分析を実施した。またチベット高原のクルガイ湿原と四川盆地南東部メタセコイア自生地における古気候や古植生を復元するための地質学的・古植物学的・動物学的調査とボーリング調査を実施した。それらの調査研究の結果明らかとなった特筆すべき事実は、現在の成都平原は長江文明が誕生する以前はうっそうとした照葉樹林におおわれていたこと。その照葉樹林が稲作農業の開始と長江文明の発展のなかで急速に破壊されたこと。現在では見渡す限りの大草原となっているチベット高原東部のクルガイ湿原周辺に、かってはトウヒ属を中心とする大森林が存在した事実をつきとめた点である。このトウヒ属を中心とする大針葉樹林は3000年前以降急速に人間によって破壊されていったことが明らかとなった。その破壊者は中国古代の神話に登場する3000年前頃、成都平原を追われた羌族であった可能性が高い。このチベット高原東部の大森林破壊が、下流域の成都平原に大洪水の頻発を引き起こし、長江文明にきわめて大きな影響を与えたことが明らかとなった。 2)長江中流域湖南省の予備調査 平成10年度以降の長江中流域の本格的な学術調査のため、平成9年12月に湖南省文物考古研究所と共同して湖南省の城頭山遺跡、彭頭山遺跡、鶏哭城遺跡と周辺の洞庭湖と〓陽平原の予備的調査を実施した。 城頭山遺跡からは中国側の発掘調査によって6500年前の中国最古の水田跡が発見されており、そこから出土した炭化米のDNA分析に関連する調査を平成10年1月に実施した。その結果、これらは熱帯ジャポニカであることが判明し、初期の稲作が焼き畑に近い水陸未分化の状態で栽培されていたことが判明した。 3)中国東北部の調査研究 長江文明は照葉樹林帯に位置する稲作文明である。これに対し、中国にはナラ林帯に位置する麦作を生業とするナラ林分化が存在する。照葉樹林帯に位置する長江文明の性格をより明らかにするために、中国東北部の麦作のナラ林帯の環境考古学的調査研究を1997年10月に実施した。その調査分析の結果、現在ではカラマツの植林しかみられない遼寧平原にはかって落葉ナラ林が広く存在したことが明らかとなった。照葉樹林とともに、ナラ林帯においても激しい森林破壊が引き起こされていた事実が明らかとなった。もう一つの日本文化のルーツの解明についてもあわせて調査研究を実施していく予定である。 4)エジプト文明と長江文明の比較調査研究 長江文明と他文明の比較調査研究として、平成9年度はエジプト文明との比較調査研究を実施した。カイロ大学講師のヘムダン・モハメッド・アブデル・ラ-マン・アリ博士と、ロンドン大学ヘクリ・ハッサン教授と共同して、平成10年2月にエジプト、ファイユ-ム湖周辺の学術調査を実施した。ファイユ-ム湖の湖底からは年縞の連続した5-6mの堆積物を採取した。堆積物は5地点から採取し、堆積速度から推定して、およそ、過去6000年間の高精度分解能の環境変遷を解明できる見通しが得られた。年縞の1枚・1枚について花粉や珪藻などの微化石や安定同位体分析を実施することによって、これまで歴年代の編年がもっとも明白なエジプト文明の興亡と環境変動の関係を、きわめて正確に論じることができると期待される。とくに、ファイユ-ム湖の水はナイル川と連続しており、ナイル川の水位の変動とエジプト文明の興亡や気候変動とエジプト文明の興亡を解明できることが期待できる。いうまでもなく、ナイル川の水位の変動はモンスーンの活動によって支配されている。モンスーンの活動はまた稲作を基盤とする長江文明の興亡にも大きな影響をあたえている。モンスーンによって連動した長江文明とエジプト文明の興亡の歴史的ダイナミズムを、ファイユ-ム湖の湖底堆積物の詳細な分析から明らかにできるだろう。 5)国際シンポジウム 長江文明研究の研究者の交流と情報交換ならびに研究成果の公開のために平成9年12月14日-17日の間、中国四川省成都において日中共同「長江文明の探求」に関する研究連絡打合せをおこなった。さらに平成10年3月18日-22日には文部省国際シンポジウム開催経費(COE「中核的拠点形成分」)で、「古代文明の比較研究-長江文明の人類史的位置付け-」をテーマとした国際シンポジウムを京都で開催した。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Y.Yshinori: "Environment and Civilization" Newsletter of the Grant-in-aid Program for COE Research Foundation of the Ministry of Education,Science,Sports and Culture. vol.1. 1-4 (1998)
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[Publications] H.Kitagawa et al.: "Radiocarbon dates at Longmagucheng Baodun Site,China" Radiocarbon. 37-121. 21-22 (1998)
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[Publications] Y.Yasuda(ed.): "The Forest and Civilization" Short Run Press,UK, 310 (1998)
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[Publications] Y.Yasuda(ed.): "The Origin of Agriculture" Short Run Press,UK, 342 (1998)
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[Publications] 安田喜憲ほか(編集): "龍馬古城宝〓遺跡" 日中共同長江文明学術調査団, 52 (1998)
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[Publications] 徐 朝龍: "長江文明の発見" 角川書店, 281 (1998)
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[Publications] 安田喜憲: "縄文文明の環境" 吉川弘文館, 281 (1997)