1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09CE1001
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
安田 喜憲 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (50093828)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
外山 秀一 皇學館大学, 文学部, 助教授 (50247756)
高橋 学 立命館大学, 文学部, 教授 (80236322)
佐藤 洋一郎 静岡大学, 農学部, 助教授 (20145113)
北川 浩之 名古屋大学, 大気水圏科学研究所, 助教授 (00234245)
福澤 仁之 東京都立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80208933)
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Keywords | 長江文明 / 環境考古学 / 稲作の起源 / 稲作文明 / プラント・オパール分析 / 鶏叫城遺跡 / 城頭山遺跡 / 〓王国 |
Research Abstract |
1)旧石器時代から新石器時代への環境の激動と稲作の起源 旧石器時代から新石器時代への環境の激動と稲作の起源の解明のための調査研究を実施した。その結果、初期の稲作はレスの古土壤の発達する比較的乾燥したチガヤなどの生育する平原の湿地の周辺で始まったことが明らかとなった。稲作の開始にはレスの古土壤の発達が重要な役割を果たしていたことが、解明された。さらに稲作の開始には旧石器時代の高い人口圧をもった社会が気候悪化によって危機に瀕したことが、重要な契機となったことが明らかとなった。 2)都市文明誕生の謎の解明 都市文明誕生の謎の解明のため湖南省城頭山遺跡の調査研究を実施した。^<14>C年代測定の結果、城頭山遺跡は中国最古の城壁都市(6,000年前)であり、東門から発見された水田(7,000年前)と祭壇(6,000年前)も、ともに中国最古のものであることが、判明した。祭壇からは大量の稲籾や大型動物骨、生け贄にされたとみなされる人骨が発見された。また祭壇と同時代の大渓文化初期の水田からは、大量の稲籾のプラント・オパールが発見され、おそらく日本の新嘗祭に類似した稲作の豊穣を願う儀礼が行われたものと推定された。発堀調査の結果からは、これまで発見された住居とは格段に大きな厚い壁を持つ大型の住居跡が遺跡の西よりの中央部から発見された。そこは遺跡の中では最も高い部分にあたり、おそらく巫女や司祭者の住居であったとみなされた。さらに南門の船付き場の発掘と環境考古学的調査によって、この船着き場の北側には、城壁がそびえたち、ドッグの深さは5mまで掘り下げられ、ドッグの西側から大型住居の発見された中央の支配者の住居にむかって道路が整備されていたことも判明した。このことは、城頭山遺跡に人々が集中する手段として、水上交通がきわめて大きな役割を果たしていたことを物語る。このように、中国最古の都市文明を誕生させた生産的基盤は何であったか。いかなる要因が城壁を造成させ都市型集落を誕生させたか、どのようにして人々が都市へと集まったかについて、かなり明らかにすることができた。 3)大渓文化から屈家嶺文化への変動 城頭山遺跡は屈家嶺文化の時代(5,000年前)に入ると、周辺の環境が激変したことが明らかとなった。土地は乾燥化し、城内の人口も減少した。城頭山遺跡は大渓文化の時代の繁栄期から、屈家嶺文化の時代には衰退期に入った。
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そして、〓陽平原の中心都市は、城頭山遺跡から鷄叫城遺跡へと移動することも判明した。鶏叫遺跡の低空測量の結果、遺跡は長径400m短径370mの隅丸の長方形をしている城壁都市であることが判明した。5,000年前に文明の中心地が城頭山遺跡から鶏叫城に移動した背景には、5,000年前の気候の乾燥化が大きくかかわっていることが明らかとなってきた。 4)モンスーン大変動と長江文明興亡の謎の解明 稲作に立脚した長江文明の興亡はモンスーンの大変動に強く支配されていた可能性が大である。モンスーンの大変動を解明するためモンスーンの核心地域である雲南省、〓海、中甸地域の湖沼湿原に大規模なボーリングを実施し、堆積物を採取した。〓海では水深20mの湖心部から60mの連続不攪乱試料を採集することに成功した。さらにモンスーンの縁辺地域である中国東北部の遼寧省、内モンゴル自治区ならびにモンゴル人民共和国の湖沼と湿原からも、堆積物を採取することに成功し、これらの堆積物の各種分析を実施し、中国における過去数万年間の高精度分解能の環境変遷史を解明できる見通しがえられた。 5)雲南省における〓王国興亡の謎の解明 長江文明の特異なものとして雲南省の〓王国の環境考古学的調査研究を実施した。平成11年度は小板橋遺跡から出土した漆製品や青銅器の化学分析、漆製品の記録保存のためにハイビジョン撮影、AMS年代測定、脂肪酸分析、昆虫化石分析などを実施した。漆製品はスズの粉末を使用した蒔絵の技法が使用され、青銅器の原料の産地は四川省の三星堆遺跡などとはまったく異質の鉱山から採掘されたものであることが判明した。さらに昆虫化石の分析によって喪の期間が特定できたことも、画期的な発見であった。 6)長江文明と他文明の比較研究 長江文明と他文明の比較研究のため平成11年度はインダス文明との比較を重点的に実施した。 7)印刷物の刊行 長江文明研究プロジェクトとして、平成11年度はニュースレター「Environment and civilization-Newsletter of the Yangze River Civilization Project (YRCP)NO,3」を刊行した。 8)研究成果の公開 長江文明の探求の研究成果を一般に広く普及するために、平成11年7月1日に中国人の研究者を日本によんで記者発表を行った。また国際日本文化研究センター展示室において、一般公開用の展示を平成11年11月から1年間実施中である。 Less
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Research Products
(9 results)
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[Publications] Fukusawa,H.: "Varved lacustrine sediments in Japan."Quat.Res.. 38. 223-229 (1999)
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[Publications] Kashima,K,Sayhan,Sencel,Naruse,T,and Ishimaru,K.: "Quaternary Environmental Changes and Geomorphological Evolutions at Kaman-Kakehoyuk and its Surrounding Area,Central Turkey"Anatolian Archaeological Studies. 8. 239-250 (1999)
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[Publications] Kashima,K.: "The Geo-Archaeological Program for the Palaeoenvironmental reconstructions during the Late Quaternary at Central Anatoloa in 1995-1999."Anatolian Archaeological Studies. 9(In press). (2000)
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[Publications] 安田喜憲: "大河文明の誕生"角川書店. 354 (2000)
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[Publications] 梅原猛,厳文明,樋口隆康: "長江文明の曙"角川書店. 242 (2000)
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[Publications] 安田喜憲 編: "はじめて出会う日本考古学"有斐閣. 328 (1999)
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[Publications] 佐藤洋一郎: "DNA考古学"東洋書店. 201 (1999)
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[Publications] 佐藤洋一郎: "森と田んぼのクライシス(朝日選書637)"朝日新聞社. 227 (1999)
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[Publications] 安田喜憲: "東西文明の風土"朝倉書店. 194 (1999)