Research Abstract |
今年度は昨年度に引き続きカムランド実験装置の建設を行い,平成13年11月に全実験装置が完成した。その後,装置の調整を続け,平成14年1月22日より実験データ収集を開始した。 (1)液体シンチレータの混合,純化,検出器内への注入 平成13年5月から,3,000m^3タンク内に注入される流動パラフィンと,液体シンチレータの混合成分である流動パラフィン,トリメチルベンゼン,PPOを定期的に一定量を実験施設内に搬入し,注入を開始した。まず,タンク・ローリーで運ばれた流動パラフィンとトリメチルベンゼンにPPOを混ぜた液体シンチレータを作り貯槽タンクに入れる。また残った流動パラフィンを別の貯槽タンクに入れる。これら流動パラフィンと液体シンチレータに対して、別々の純化装置によって,不純物微粒子,空気,水分,ウラン・トリウム・カリウム等の放射能を除去する純化作業を行なった。純化精製された流動パラフィンと液体シンチレータは,それぞれ3,000m^3タンク内と1,200m^3バルーン内に注入した。注入方法は非常に複雑で,バルーン内外の液面レベルを等しく保たなければならず,間違うとバルーンを破損することも考えられるため,細心の注意を払う必要があった。上記の液の搬入,純化,注入の一連の作業は一日(24時間)通して行われ,これを5ケ月間繰り返し,9月末に完了した。これらの一連の作業は,タンク・ローリによる搬入を省いて全て研究者が行なった。 (2)データ収集電子回路装置,データ収集電子計算機装置の設置,調整 2600チャンネルのデータ収集電子回路の大量生産は昨年度から継続して行なわれ,平成13年7月に終了する予定であったが,製作段階でロボットによるハンダ付けミスが発覚し,研究者がそれを修正するというトラブルが生じた。このため,出来あがったものから順次実験室に設置して調整を行い,期待される性能を示したもののみ使用し,省かれた電子回路はハンダ付けミスの箇所を調べて修復することを繰り返した。この作業によって1月中旬までに全電子回路の9割の良品を整備することができ,1月22日からデータ収集を開始することに漕ぎ着けた。実験開始後は,データ収集電子回路を制御する計算機も同時に組み込み電子回路とともに総合運転の調整を行なった。 (3)液体シンチレータ検出器性能較正装置の設置,調整 液体シンチレータ検出器とデータ収集電子回路装置を一体にした全実験装置の時間情報,エネルギー情報取得の性能を評価し適切な較正を施すために,放射線源やレーザ光を用いた時間・エネルギー較正装置を検出器内にセット・調整した。 [実験データ収集・解析] 平成14年1月22日から実験開始,実験装置の性能確認し,データ解析を継続している。3月には国際会議を開催し,本実験装置の性能,原子炉反ニュートリノ検出の現状,地球反ニュートリノ検出の現状を報告した。
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