Research Abstract |
先端機械技術と先端制御技術の有機的結合を計った機械システムの創造を目的に掲げ,「目的と環境に合わせて,高い性能を実現するように自己組織的に機能と形態を変えることのできるマシン」を「スーパーメカノシステム(Super Mechano-System,SMS)」と呼び,その研究をサイバーメカニズムの開発(超冗長/可変拘束・適応構造/自律集散機械システムの開発),新機能機械要素の創出(ネオファンクションの創出),機械システムの動的機能設計理論の体系化,の3つを柱として実施してきた。最終目標はその具体的研究・開発を通して,スーパーメカノシステム学の体系化を行うことにある。各グループでの成果は以下の通りであり,概ね予定通りに進行している。 1. サイバーメカニズムの開発 超冗長多関節多機能ロボットとして,災害現場の瓦礫内を推進するヘビ型ロボットの原理確認用機械モデルの試作を行った.また,環境に合わせて拘束条件を静的に変えながら作業を行う多足ロボットシステムとして,災害現場で働くパラレル/シリアル複合型移動作業ロボットでセンサー系統を搭載しない機能確認機の試作,急斜面や凹凸環境を移動する視覚装置付き歩行ロボットの試作,地雷が埋設された凹凸面を移動し地雷撤去作業を行う歩行型ロボットの小型機械モデルの試作,地表を打撃しながらの地雷誘発動作についてのダイナミクスの検討,安定な姿勢保持と高い作業製法を発揮する多脚ロボットの機構・センサー系・制御系の検討を行った. さらに,自律集散しながら作業を行う群ロボットのための基本ユニットとなる移動機構の試作,群ロボットに搭載した複数のマイクロホンによる瓦礫内被災者の発見システムの検討,群ロボットの自律集散による運搬動作の実現,宇宙空間で浮遊する衛星の安定捕獲作業を行うロボットシステムの検討,などを行った. 2. ネオファンクションの創出 新しい機能を創出する機構要素として動的な可変拘束条件を持つ多自由度機構を取り上げ,その代表例として2足歩行ロボット,4足歩行ロボット,蛇ロボット,イルカロボットを対象に,それらの力学的性質を解明し,駆動法や制御法の研究を進めた.2足歩行機構では自励振動駆動による歩行機械,歩行パターンを自動的に発生するパッシブ歩行機械を実現した。4足歩行ロボットではジャンプ走行の可変拘束制御理論を提案し,1本足,2本足実験機によりその有効性を確認した.蛇型ロボットについては各種のモデルについて運動制御理論を構築した.また,イルカ形の水中推進機構を実現し,最適運動形態に関して考察した。 一方で,ノンホロノミック拘束系に対する制御法について研究し,宇宙ロボット,平行板内動球の制御法を開発し,実験での検証を行った.また,鉄棒運動ロボットを実現し,その動力学的性質を解析するとともに,走り高跳びロボットの実現について考察した。さらに,ノンホロノミック拘束を受ける車両群の協調制御,集散制御について検討した。 3. 動的機能設計理論の体系化 高速かつ高ロバストな制御性能を実現するために必要となる機構の性質について検討し,周波数帯域を限定した「同相性」と「正実性」が重要であることを指摘し,それらの関係をシステム制御理論の観点から明かにした.また,この結果に基づいて,特に磁気ディスク装置のヘッド位置決め機構を対象に,機構と制御系の統合最適設計手法の新しい枠組に関する検討を行った.その結果,周波数帯域を陽に考慮した制御理論の確立と,制御のしやすさや動的機能性を考慮した動的機構設計の最適化手法の開発が重要であるとの結論を得た。一方,隣接同士の情報連絡のみによって行動するセルロボット群を考え,このようなロボット群が高度に自己組織化された仕事をこなすためのアルゴリズムを提案し,シミュレーションモデルで確認した.さらに,プロトタイプマシンによる検討を開始した.また,機械システムの拘束条件付制御法の一つとして数理計画法で知られている相補性理論を適用することを検討している。
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