Research Abstract |
本研究の目的は,無形資産への投資あるいは蓄積が,企業の持続的競争優位にどのような影響を与えるかを実証的に検証することにある.平成21年度は,無形資産の指標,企業の持続的競争優位を表す代理変数に関する検討などを踏まえて,主に企業の事業パフォーマンスとの関連性に関する検証を行った.その成果のひとつがIJBPM誌に受理された論文である.この研究では,企業の事業パフォーマンスを表す指標として収益性と競争優位を取り上げ,企業固有の収益性がどのような要因によって決定されるか,無形資産への投資によってどのような影響を受けるかを解明した. 本年度は,その発展として,無形資産への投資あるいはその蓄積が,企業の市場価値や株式リターンにどのような影響を与えるかに焦点を当てて研究を行った.とりわけ,競争環境や資源制約が存在する下で,どのような無形資産投資を行うと,市場からどのように評価されるかを明らかにした.この研究成果のひとつがIJTM誌に投稿して受理された論文である. 本年度はさらに,『資源蓄積のフィッティング』という概念に注目し,資源蓄積が企業パフォーマンスに正の影響を与える条件の解明を試みた.そうした環境条件として,戦略志向性,戦略グループ,株式所有構造,金融危機等を取り上げて,実証的な検証を行った.これらの検証は8本のワーキング・ペーパーとしてまとめ上げ,それぞれ適切な学術誌に投稿中である.とりわけ最近は,金融危機の前後で大きく変化した外国人投資家による所有が,無形資産投資を含む企業の資源蓄積行動,パテント,企業パフォーマンス等に,どのような影響を与えているかに注目し,研究を進めている.
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