Research Abstract |
教員の力量形成には,養成-採用-研修の全体にわたり,教員のライフステージに沿って職能形成を図る研修政策が不可欠である。日本の現職教育の質の高さは国際的に知られており,その中心は学校を単位とし,OJTとして実施される校内研修である。研究は,仙台市と杭州市を対象に,義務教育学校教師の学歴,専門,性別,年令と,教育力量の現状と課題,大学との連携,研修,指導教員の役割などの相関を明らかにし,校内研修の果たしている役割と課題について検討した。日中比較のため,同じ質問紙を使い,仙台市の場合は,職員録をもとに10%抽出,杭州市教員は中堅教員研修参加教員を対象に,研修会場で配布した。回収率はおおむね35%で,十分なデータが得られた。また,ライフステージに沿った教員研修政策に関し,各都道府県の研修計画を,宮城県教員研修センターや各都道府県教育委員会HPから収集し,収集できなかった自治体については,文書等で収集した。 これらのデータを解釈し,教員研修の実態を把握するために,宮城教育大学付属小学校の手厚い協力を得,各種公開研究会や校内研修への参加など参与観察を1年間にわたって行った。 これらの調査研究の結果,日本の校内研修も必ず成果をあげておらず,マンネリ傾向が見られること,研修の指導体制として指導者の課題が大きいこと,その理由として,中国では優秀教員制度などがあり,中堅以上の教員が管理職と教育職とに分かれて専門性を高めるのに対し,日本の場合は,管理職の昇進ルートに一元化されており,教育専門性を発展させる仕組みが十分でないことが明らかになった。
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