2009 Fiscal Year Annual Research Report
光学活性アルカリ土類金属錯体を活用する触媒的不斉合成反応の開発研究
Project/Area Number |
09F09045
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 修 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JIMENEZ-AQUINO Agustin 東京大学, 大学院・理学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 不斉合成反応 / 触媒 / アルカリ土類金属 / エポキシド / インジウム / ホウ素 |
Research Abstract |
本年度は、アルカリ土類金属を活用するエポキシドの触媒的不斉開環反応について検討を行った。エポキシドの不斉開環反応は、光学活性アルコールを合成する有用な反応の一つである。アルカリ土類金属化合物はその対アニオンの強いブレンステッド塩基性に加え、その金属上に適度なルイス酸性を有している。そこで、対アニオンによって基質上に炭素アニオンを生成させ、一方でその金属上のルイス酸性によりエポキシドを活性化して両者を反応させる検討を行った。しかしながら、種々のアルカリ土類金属化合物を用い検討を行ったが、反応は進行しなかった。一方、エポキシドはアリルインジウム等の有機金属試薬と良好に反応する求電子剤であることが報告されている。典型金属であるインジウムおよびその化合物は、遷移金属と比較して安価で低毒性であることが知られている。そこで、インジウム化合物を用いたアリルボロネートによるエポキシドの開環反応の検討を行った。アリルインジウムは一般に、反応系中でハロゲン化アリルと化学量論量の1価または0価のインジウムから生成される。また、3価の塩化インジウムを用いたエポキシドの1,2-転位反応がこれまでに報告されており、末端エポキシドを用いた場合には立体障害の小さい位置で選択的に反応することが明らかとなっている。本研究においては、ルイス酸-ルイス塩基協同過程による、触媒量のインジウムを用いた反応の開発を行った。その結果、前述の報告例とは異なり、末端エポキシドを用いた場合、より立体障害の大きい位置にアリル基が付加した生成物が得られた。本反応は、ホウ素-インジウム間のトランスメタル化を経たアリルインジウム種の生成およびルイス酸であるインジウムによるエポキシドの活性化により進行しているものと推定している。
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