2010 Fiscal Year Annual Research Report
π共役系超分子の構築と有機エレクトロニクスへの応用
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09F09046
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 栄一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朱 暁張 東京大学, 大学院・理学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | キノイド化合物 / 光物性 / 近赤外光 / 電気化学 / 酸化還元 / ビラジカル |
Research Abstract |
これまでに独自の方法で開発したメチレン架橋フェニレンビニレン化合物(以下LOPVと略す)をもとに,これらのキノイド型誘導体を合成し,安定性ならびに物性評価を行った.フェニレンビニレンユニットが1つのLOPV1と同ユニットが2つのLOPV2の末端をヨウ素化し,パラジウム触媒を用いたマロノニトリルとのカップリング反応引き続く酸化反応により,末端にジシアノメチレン基を有するキノイド体QLOPV1およびQLOPV2をそれぞれ青色固体,緑色固体として得た.これらの化合物は空気中,溶液状態でも非常に安定であり,サイクリックボルタンメトリー測定でも可逆な酸化波・還元波を示すなど,電気化学的にも安定である.吸収測定により,QLOPV1,QLOPV2の最長波長吸収極大はそれぞれ750nm,1100nmと,可視~近赤外光領域に吸収帯を持つことを明らかにした.また,これらの化合物は近赤外領域に発光を示した.ESR測定により,QLOPV2はビラジカル性を示すことも明らかにした.一重項と三重項とエネルギー差は1.83eVと非常に小さいことが理論計算から見積もられており,これが原因であると考えられる.さらに,これらの化合物を化学的に2電子還元した化合物も安定に得られ,非常に強い発光を示すことも見出している.以上のように,QLOPVシリーズは近赤外吸収・発光色素として近赤外太陽電池,近赤外エレクトロルミネッセンスなど,これまでにない新たな用途を拓く化合物として期待されるほか,酸化還元による発光波長および強度の劇的な変化を利用することで,センサーやバイオイメージング色素などとしての応用も期待される.
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Research Products
(2 results)