2009 Fiscal Year Annual Research Report
機能性有機ホウ素材料のための新たなホウ素置換基の開発
Project/Area Number |
09F09047
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山口 茂弘 Nagoya University, 理学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ZHOU Zhiguo 名古屋大学, 理学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | ホウ素置換基 / 平面 / ルイス酸 / フリーデルクラフツ反応 / X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
π電子系骨格に三配位ホウ素置換基を導入すると,ホウ素の空のp軌道を介したp_π-π*相互作用により高い電子受容性が発現し,特異な光物性を示す.この特性を利用して,数々の含ホウ素π共役系化合物が合成され,これらの光学・電子材料としての応用研究が報告されている.しかし,これまでに用いられているホウ素置換基のほとんどはジメシチルボリル基(Mes_2B基)に限られており,さらに優れた機能をもつ含ホウ素π電子系材料を開発するためには,新たなホウ素置換基の系統的な開発が重要な鍵を握っている. 本研究では,ホウ素に導入する三つのアリール基をメチレン鎖で架橋し,ホウ素を含む平面を強固に固定化すれば,従来のホウ素置換基のような嵩高いアリール基を用いなくても,三配位ホウ素化合物を十分に安定化できるのではないかと考えた.本年度は,このモデル化合物として,平面型ホウ素化合物1の合成に取り組んだ. 1の鍵前駆体として,10,10-ジヒドロ-9-ボラアントラセンのホウ素上に,1,6位に2-プロペニル基をもつベンゼンを導入した化合物を合成した.目的の平面型ホウ素化合物1を合成するためには,この前駆体から,フリーデルクラフツ型の反応により,一気に平面ホウ素化合物に変換できるかが鍵であった.様々なルイス酸性の試薬を検討した結果,Sc(OTf)_3を過剰量用いると,目的の平面ホウ素化合物1が収率46%で合成できることがわかった.X線結晶構造解析の結果,ホウ素周りの結合角の和はほぼ360度であり,1は予想通り高い平面性をもつことが確認された.また,1は,予想通り,ホウ素上の立体保護基をもたないにもかかわらず,水や空気に対しても極めて安定であることが明らかとなり,1の分離精製は通常のシリカゲルカラムクロマトグラフィーで行うことができた.CV測定の結果,1は-2.69V(vs Fc/Fc^+)に還元波を示し,Mes_3B(-2.60V)と同等の電子受容性をもつことが分かった.
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