2011 Fiscal Year Annual Research Report
細菌べん毛モーターのトルク発生と回転方向スイッチのメカニズム
Project/Area Number |
09F09101
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
難波 啓一 大阪大学, 大学院・生命機能研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BAI Fan 大阪大学, 大学院・生命機能研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | べん毛モーター / 回転メカニズム / べん毛蛋白質輸送 / タイプ3輸送装置 / ATPase |
Research Abstract |
細菌べん毛モーターは回転子、固定子、軸、軸受け、反転制御装置からなる、直径約40ナノメートルの超分子モーターである。細胞膜を横切る電位差とプロトン濃度差によって、固定子でもあるイオンチャネルを通して細胞外から細胞内へ流れ込むプロトンのエネルギーにより、回転子と固定子の構成蛋白質間相互作用がトルクを発生し、毎分2万回転もの高速で回転し、らせん型プロペラのべん毛繊維を回転させて菌体の推進力を発生する。また、細胞外に伸びるべん毛の構築には、べん毛蛋白質をべん毛の中心軸に沿って貫通するチャネルを通して先端まで輸送する装置がべん毛基部体にあり、6種類の膜貫通型蛋白質からなる輸送ゲートに3種類の可溶性蛋白質が結合解離を繰り返すことで、輸送基質である細胞内のべん毛蛋白質を効率よく輸送ゲートに運び、べん毛軸チャネル内に輸送する。 今年度は、このべん毛蛋白質輸送装置を構成する可溶性蛋白質の一つでATP分解酵素でもあるFliIが、輸送ゲートに輸送基質を運ぶ際に形成する複合体のFliI分子の数や、その結合解離のダイナミクスを、蛍光顕微計測観察法により観察し計測した。すでに実験を終えてデータ解析を行っている。 難波研究室での1年10ヶ月にわたる滞在中に、国際学術誌に掲載された論文が1報、投稿して審査中の論文が2報、準備中の論文が3報あり、いずれもべん毛モーターの回転機構やべん毛蛋白質輸送装置の膜横断蛋白質輸送メカニズムに重要な手掛かりを与える興味深い内容である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
期間を短縮しての終了は、出身大学である北京大学で準独立な教員ポストを得たためであるが、それを可能にしたのは、博士号の学位を取得し、その後約1年間博士研究員として過ごしたオックスフォード大学物理学科での輝かしい業績に加えて、大阪大学大学院生命機能研究科に滞在した1年10ヶ月の間に得た数々の興味深い成果によるもので、阪大の研究環境を本人が十二分に活用した成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
2011年7月末に北京大学に赴任した後も共同研究は続行し、データの解析やその結果が意味することについて議論を進め、それをいくつかの論文にまとめる予定である。その後も共同研究は継続的発展的に実施する予定である。
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Research Products
(2 results)