2011 Fiscal Year Annual Research Report
(-)-レセルビンの全合成 : Pd(II)の触媒的環化反応を用いる新規合成
Project/Area Number |
09F09130
|
Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
上西 潤一 京都薬科大学, 薬学部, 教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MENDU Narender 京都薬科大学, 薬学部, 外国人特別研究員
|
Keywords | (-)-レセルピン / β-カルボリン / アルカロイド / Pd触媒 / 触媒的環化反応 / 分子内メタセシス / 選択的反応 / 全合成 |
Research Abstract |
レセルピンはラオルファアルカロイドの一種であり、強い降圧作用を有し臨床現場でも用いられている医薬品である。本研究は、このβ-カルボリン骨格を有するレセルピンの全合成に関する研究である。 まずABCD環の基本骨格を完成するまで、ラセミ体で合成を進める事とした。既知の6-メトキシトリプタミンを出発物質に環化前駆体を7段階収率30%で得る事が出来た。環化はPd触媒を用いる条件を用い、収率84%でテトラヒドローβ-カルボリン骨格に導く事が出来た。続いて、窒素上の保護基を3-ブテノイル基に変換し、分子内メタセシス反応を行ったところ、収率68%で環化体が得られた。次いでDBUでアルケンを異性化し目的のABCD環中間体を84%で得る事が出来た。 次に、光学活性体の合成に移った。即ち、光学活性体のアルケニルホウ酸ピナコールエステルを合成し、これを用いて前駆体に導いた。6位が無置換体とメトキシ体の両方を合成し、これを2価Pd触媒による環化条件に付したが、得られた生成物はラセミ体であった。一方、Bi(OTf)_3触媒による環化条件で行なったところ、この条件でも1,3-不斉転写は起らずラセミ化した環化生成物を収率よく与えた。 この現象はインドール環の特性により、窒素原子の分子内求核反応が起きる前に、水酸基が脱離し共鳴安定化したカチオンが生じやすくなっているためであると考えられた。その為に、インドール環上の窒素原子の電子対の押し出しによるアシルイミニウムイオンの生成を抑制する必要がある。そこでN上に電子求引特性を有するトリフルオロメタンスルホニル基を窒素上の置換基として環化反応を行った。その結果、マイナス15度でBi(OTf)_3触媒を用いた条件下に約3:1の選択比、収率67%で環化体を得る事が出来た。 以上、ラセミ体としての合成の見通しはついて来たが、光学活性体としては満足のゆく結果とはならなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
環化反応における立体選択性においてインドール環の特異性のため当初期待していたほどの選択比が出なかった。その為、窒素上の保護基の検討に期間を費やした。しかしその結果、27:73の選択比まで向上させることが出来たが、それではまだ充分とは云えないのが現状である。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、他の関連プロジェクトでより緩和な環化条件を検討中であり、その結果如何で解決策が見出されるかもしれない。ラセミ体の合成なら可能であるが、それではこのプロジェクトの狙いではないので、もう少し検討する。
|