2010 Fiscal Year Annual Research Report
ES細胞におけるナトリウム利尿ペプチドの役割の解明
Project/Area Number |
09F09133
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
遠山 育夫 滋賀医科大学, 分子神経科学研究センター, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ABDELALIM M. Essam 滋賀医科大学, 分子神経科学研究センター, 外国人特別研究員
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Keywords | ES細胞 / 分化 / ペプチド / 受容体 / 発生 |
Research Abstract |
B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は心筋細胞から分泌されるペプチドホルモンであるが、我々は未分化なES細胞がBNPを産生していることを見出した。これはBNPが心筋ホルモンとしてのみならずES細胞の増殖や分化に関与していることを示している。本研究の目的は、ES細胞が分泌するナトリウム利尿ペプチドの機能的意義の解明を通して「ナトリウム利尿ペプチドはES細胞ホルモンである」という作業仮説を検証することである。平成22年度はES細胞におけるナトリウム利尿ペプチドの受容体NPR-Aの役割について検討し、以下の点を明らかにした。1)RNA干渉法を用いてES細胞のNPR-Aの発現をノックアウトすると、細胞分裂周期のうちG1期の細胞が増え、同時にES細胞の分化が開始される。2)その際に、Oct4, Nanog and Sox2など自己増殖と多能性に関与する内因性分子の量が低下し、分化に関わる遺伝子発現が増加する。3)ES細胞のNPR-Aの発現をノックアウトすると、細胞内伝達系Aktのリン酸化が減少する。次にNPR-AのリンガンドであるA型ナトリウム利尿ペプチド(ANP)を調べたところ、ANPは自己増殖するES細胞に強く発現しているが、ES細胞培地からLeukemia Inhibitory Factor (LIF)を除いてES細胞を分化させると、ANPの発現が減少する。一方、外因性にANPを加えるとOct4やNanogの発現が増加し、Aktのリン酸化が促進される。このANPの作用は、NPR-Aの拮抗剤で打ち消されることから、NPR-Aを介した経路によると考えられた。以上の結果は、ANP-NPR-A経路が、ES細胞の自己増殖と多能性の維持に働いていることを示している。 これらの成果を国際学術誌Cell Death and Diseaseに掲載するとともに国際学会で報告した。また、ES細胞に関する本の1章を執筆した。
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Research Products
(3 results)