2009 Fiscal Year Annual Research Report
ES細胞におけるナトリウム利尿ペプチドの役割の解明
Project/Area Number |
09F09133
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
遠山 育夫 Shiga University of Medical Science, 分子神経科学研究センター, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ESSAM Abdelalim M. 滋賀医科大学, 分子神経科学研究センター, 外国人特別研究員
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Keywords | ES細胞 / 分化 / ペプチド / 受容体 / 発生 |
Research Abstract |
B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は心筋細胞から分泌されるペプチドホルモンであるが、我々は未分化なES細胞がBNPを産生していることを見出した。これはBNPが心筋モルモンとしてのみならずES細胞の増殖や分化に関与していることを示している。本研究の目的は、ES細胞が分泌するナトリウム利尿ペプチドの機能的意義の解明を通して「ナトリウム利尿ペプチドはES細胞ホルモンである」という作業仮説を検証することである。平成21年度はマウスES再細胞を用いて以下の点を明らかにした。1)RT-PCR法、ウエスタンブロット法、免疫組織化学法などの結果、マウスES細胞はBNPおよびNPR-Aを発現していた。2)培養液からLIFを除いて分化誘導すると、Oct-4の消失に一致して、BNP、NPR-Aの発現が消失した。3)BNPの発現をsiRNAで抑制すると、細胞分裂が有意に抑制され、BrdUの取り込み量も減少した。また、ES細胞のS期が減少し、G1期とG2/M期が増加していた。4)一方で、BNPの発現をsiRNAで抑制しても、分化マーカーであるOct-4とnanogの発現量は、変化がなかった。これらの結果は、BNPは細胞増殖を促進するが細胞分化に明らかな影響を与えないことを示唆している。つぎに、GAB-A受容体の発現を検討したところ、BNPの発現を抑制すると、GABAA受容体の発現量とその下流に位置するγ-H2AXの量がともに有意に増加した。一方、T細胞の分裂促進と生存維持に関わるとされる転写因子Ets-1の発現が有意に減少した。以上の結果は、BNPによるES細胞の増殖経路には、少なくともEts-1を介する経路と、GABA-GABA受容体シグナル経路を抑制する経路が存在することが示唆された。 本研究の成果の一部を国際学術誌に報告するとともに第50回日本組織細胞化学会、第4回幹細胞世界会議で発表した。
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Research Products
(3 results)