2011 Fiscal Year Annual Research Report
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09F09143
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
長塚 仁 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SATHI G.A. 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | エナメル上皮腫 / 骨吸収 / WDR5 / sFRP / Wnt / 歯原性腫瘍 |
Research Abstract |
前年度は骨形成とその制御に関わるWntシグナルに注目し、その抑制因子であるsFRP-2がエナメル上皮腫の骨形成を抑制する重要な因子であることを明らかにした。本年度は、sFRP-2のアンタゴニストであるWDR5について、エナメル上皮腫組織材料を用いて、WDR5、Wnt、sFRP-2、Wntのターゲットであるβ-cateninの蛋白発現解析を行うとともに、エナメル上皮腫由来細胞株のAM-1細胞と骨芽細胞に分化するKUSA/A1細胞との共培養系を用いて、WDR5、sFRP-2発現がWntシグナルや骨芽細胞のRUNX2発現に及ぼす影響についても検討した。 エナメル上皮腫46例を用いて免疫組織化学的検討を行った結果、WDR5蛋白発現がみられた症例は少数であった。一方、sFRP-2はほとんどの症例において陽性を示した。また、RUNX2もWDR5同様に多くが陰性であった。β-cateninは約半数の症例で陽性であったが、核内のβ-catenin量を定量したところ、ごく微量であった。AM-1細胞におけるWDR5のmRNA発現解析では、蛋白発現がほとんど見られなかったにも関わらず、mRNA発現が高いことが示された。AM-1の培養上清を加えた石灰化培地で培養したKUSA/A1細胞は、細胞増殖に関わるc-myc遺伝子、骨芽細胞への分化に関わるRUNX2遺伝子ともに発現が低下していた。 これらの結果からは、エナメル上皮腫の腫瘍細胞および間質細胞が発現するsFRP-2蛋白によってWDR5遺伝子の機能が障害され、骨芽細胞の分化も増殖も抑制されることが考えられ、エナメル上皮腫の骨浸潤に寄与していることが考えられた。核内のβ-catenin発現がわずかであったことからは、sFRP-2によるWntシグナルの阻害が考えられた。また、WDR5の遺伝子発現が高いにも関わらず、蛋白発現が認められない理由としては、細胞内でのユビキチン化による分解が考えられた。 以上の結果は、エナメル上皮腫が良性腫瘍でありながら、強い骨破壊性の増殖を示す現象の理解に貢献している。現状では広範な骨切除が必要になるエナメル上皮腫の治療において、今後、WDR5やsFRP-2をターゲットとした低侵襲性治療法の開発につながることが期待される。
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Research Products
(4 results)