2009 Fiscal Year Annual Research Report
なぜ中国の産婦人科は女医が多いのか--医療専門化と国家・ジェンダー
Project/Area Number |
09F09203
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村田 雄二郎 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
姚 毅 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 専門化 / ジェンダー |
Research Abstract |
本研究の目的は、1949年以後の中国の出産の近代化・医療化のプロセスを明らかにしようとするものである。2009年10月からスタートし、短期間ではあるが、この間、文献調査と同時に、中国の農村で、出産経験のある女性(12人)及び医療従事者(4人)に聞き取り調査を行った。まだ資料整理の段階ではあるが、初歩的分析を行った結果は以下の通りである。(1)中国では、ほぼ建国と同時に、「接生員」をも含む「郷村衛生員」の訓練もはじまった。しかし、調査地の二つ村(今は一つに合併されている)では、一つは、訓練産婆も郷村衛生員もいなかったため、90年代半ばまで殆ど旧産婆あるいは近隣女性による家庭出産だった。もう一つは、1960年代から産婆一人を訓練したにもかかわらず、旧産婆や近隣女性による助産も多くあった。(2)2004年を境として、村ではほぼ一斉に家庭出産から病院出産に移行し、それに伴い、帝王切開による出産が異常に多かっただけでなく、男性医師による帝王切開の割合も多かったことが判った。 その変化の原因の一つは、2004年1月1日から実行される『郷村医生従業管理条例』によるものが多かったと考えられる。この『条例』によって、今まで農村女性の出産に立ち会った近隣女性や訓練産婆は勿論のこと、郷村医者による助産も禁止されたので、家庭出産の道はほぼ閉ざされたのである。 家庭から病院出産への移行は、出産史において非常に注目されている事象であるが、中国は今まさにその変動の最中にある。今後は、このような聞き取り調査をさらに行い、女性はどこで誰の介助で出産したか、出産体験をどのように受け止めているか、また、目下進められている病院出産の政策にどのように反応しているか、という基礎データを得るにつとめる。
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Research Products
(1 results)