2009 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカの農業開発における社会文化的制度的要因―日本の教訓を踏まえて
Project/Area Number |
09F09207
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丸山 真人 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
FABUSORO ENIOLA 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 地域資源 / 地域活性化 / 農村開発 / 里山 / 農業再生 / 管理 / 農家経営 / 地域住民 |
Research Abstract |
本研究は、日本とアフリカの農村開発を比較するために、日本における農業再生および地域活性化に向けた取り組みを現地調査を通じて分析することを目標としている。具体的には都市近郊農村地域における小規模複合経営、里山の活用の実態、中山間地域の過疎の現状、耕作放棄地の実情などが研究対象であるが、今年度は、中山間地域の中から熊本県小国町を選び、林業、酪農、野菜作りを組み合わせた農業振興の現状把握に努めた。小国町は「小国杉」を生かしたユニークな建築物にみられるように、地域資源の有効活用を通したまちづくり、まちおこしで実績を積んできた。初年度の2009年度は、小国町役場をはじめ、森林組合、JA阿蘇小国郷へのインタビューを行って、農林業振興に関する基本的なデータを収集し、また、林家および農家へのアンケート調査を行って、林業や農業への個々の取り組みを具体的に把握する作業を行った。その結果、行政や各組合レベルにおいては、地域資源の適正管理に基づいた地域の農林業の発展に関して、高い関心はあるものの、高齢化と過疎化の圧力のもとで決定的なビジョンが打ち出せず、具体的な施策には結びついていない現状が浮かび上がってきた。他方、林家および農家は市場の動きに敏感であり、林地や農地を資産として運用する傾向が強まっていることがわかった。とりわけ、木材価格の低迷する今日においては、小国杉ブームの再来を期待することも難しく、林地を別荘として切り売りするような傾向も出てきている。とはいえ、短期間の現地調査では、現象の一部を理解しうるに過ぎない。農業および林業の市場への依存度が高いことは間違いないとしても、他方では、グリーンツーリズムや有機栽培をとおした地域外部の人々との人的交流が盛んであり、これに地域住民がどのような形でかかわっているのかを、さらに調査研究し、地域資源の有効利用の全体像を描き出すことが重要だと認識するに至った。
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