2011 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける経済発展の類型的特質の研究―在来的経済発展論の視角から
Project/Area Number |
09F09210
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷本 雅之 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
張 楓 東京大学, 大学院・経済学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 産業集積 / 高級品量産生産体制 / 家具 / 婚礼セット / 鏡台 / 建具 |
Research Abstract |
これまで、戦前期から戦後とりわけ高度成長期にかけて都市・地方間に展開されていたと思われるダイナミックな立地変化に関する歴史的分析が立ち遅れていることを問題意識に、主に家具産業の地方集積(備後地域の府中地区)に着目することで、地方集積が大都市にかわって中・高級品量産生産地域として著しく成長する過程について考察してきた。家具産業は箪笥に代表される和家具と椅子に代表される洋家具に大別でき、前者が近世に発展の起点を持つのに対して、後者が移植産業として比較的新しく、関東大震災を契機に始まるが、その本格化は戦後高度成長期以降であると考えられる。近代以降、東京や大阪を中心とする大都市部家具産業の急激な成長に対して、地方が品質や意匠において相対的に立ち遅れていた。しかしながら、戦後の1950年代以降、家具生産が戦前から続く注文家具にかわって既製家具を中心に発展し、とりわけ高度成長期において大都市集積(東京や大阪)より地方集積(府中や大川)の方が成長の拠点となった。備後地域の広島県府中が戦後の新興産地として全国有数の高級婚礼家具産地にまで急成長を遂げてきたことはその代表的な事例となる。そのなかで、高級品量産生産体制とそれを支える熟練労働者の調達・養成に関する考察はそれぞれ、「戦後高度成長期における家具産業の成長-備後府中高級婚礼家具産地に着目して-」(『経営史学』)と「高度成長期家具産業における熟練労働者の調達と養成-備後府中産地を事例に-」(『歴史と経済』)に掲載される予定となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
レフェリー論文への投稿を通じて、問題意識や枠組み、分析が高い評価を受けていたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
既存の図式化された集積類型を相対化するために、大都市集積に対する歴史的分析の作業は不可欠であると考え、東京の建具と静岡の鏡台の調査を行っている。さらにそれをふまえて「近代日本における都市・地方集積のダイナミックな立地変化に関する歴史的分析-木製品産業を事例に-」を総括していく予定である。
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Research Products
(2 results)