2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09F09229
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
香取 秀俊 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
YU D. 東京大学, 大学院・工学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 光格子時計 / 極低温 |
Research Abstract |
本研究は、新しい光格子時計の手法を考案し、その実現可能性・性能を明らかにすることを目的とするものである。昨年度は光格子中の水銀原子を用いた超狭線幅レーザーの実現可能性につて研究を行った。本年度は、新たに2つの理論的研究を行った。 まず、昨年度行った研究を87Sr原子に対して適用した。得られるレーザーの出力は、レーザー発振に用いる原子のエネルギー準位が縮退していないために制限されており、10-14W程度にとどまるが、スレーブレーザーを位相同期するには十分である。レーザーの線幅は、主にレイトシフトの揺らぎによって決まり、ポンプ光の強度揺らぎを1%まで抑えることにより、mHzレベルで制御可能である。このmHz線幅のレーザーを最新の光格子に用いることにより、周波数安定度は2ケタ程度改善されると期待される。 次に行ったのが、実時間位相同期を用いた新しい原子時計のモンテカルロシミュレーションである。この原子時計では、原子を透過した光の2つの直行位相振幅からエラー信号を得て、光を原子の共鳴に安定化する。今回は、安定化に用いる原子として、光格子中の87Sr原子を採用した。もともとの提案では、100秒の積算時間で1×10-17以下の安定度を得ることが可能とされ、熱雑音に制限されているプローブ光とそれ以上に安定な原子時計との間を結ぶ懸け橋となりうると期待された。しかしシミュレーションの結果、安定度は光のショット雑音によって制限されており、この手法を用いてもなお限界を決めているのは原子の物理系そのものではなく測定手法にあるということが分かった。スクイーズド光を用いる方法も考えたが、現在の光のスクイージング技術の限界である10dB程度では、原子のショット雑音を下回ることは難しいということがわかった。
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