Research Abstract |
これまで,海浜変形に関する研究は枚挙に暇がないほど数多くのものがなされている.ただし,これらの既往の研究は,沖浜帯から砕波帯,遡上域までを対象とする研究がほとんどである.海浜において大規模な地形変動をもたらす高波浪時には,このような沖域から遡上域までの海浜部のみならず,波が遡上し,さらには越波が生じる海浜域においても大きな地形変動が生じる.しかし,このような間欠的に生じる越波現象に伴う地形変化については,これまでほとんど研究がなされていない.その理由は,(1)現象の生起がまれであり,またその発生箇所も予測が困難であるため,現地データがほとんど蓄積されていない,(2)間欠的に生じる越波による,ドライな砂面上の薄層流を記述する動力学が確立されていないことなどが挙げられる. そこで,今年度の研究においては,このような越波に伴う地形変化に関する実験を行うとともに,七北田川河口部において台風通過後の越波による地形変化の現地調査を実施した.これらをもとに,地形変化を予測するモデルの開発を行った. 海面上昇は今後,世界各地での海岸侵食を加速化させると危惧されている.また,このような長期的な海面の変化を抜きにしても,海浜へ土砂を供給する流域の土砂環境変化や,沿岸域での各種海岸構造物の構築により,海岸侵食が国の内外で顕在化している.このため,将来の海浜の変化過程を予測するための精緻な海浜変形モデルの構築が望まれている.本研究はこの方向性に沿ったものであり,きわめて高い重要性を有している.
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