2011 Fiscal Year Annual Research Report
水環境中におけるブラックカーボンの挙動と消長の解析
Project/Area Number |
09F09290
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
滝沢 智 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LOHWACHARIN Jenyuk 東京大学, 大学院・工学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | ブラックカーボン / 水環境 / コロイド / 天然有機物 |
Research Abstract |
ブラックカーボン(BC)は、山火事や火山活動、化石燃料やバイオマスの不完全燃焼で発生する。大気中に排出されたBCは、湿式(降雨)や乾式の沈澱により地表に到達し、その一部は土壌に吸着し,一部が降雨時に土壌とともに流出すると考えられているが、その動態は明らかでない。そこで本研究では、水中でのBCと天然有機物(NOM)との相互関係や、流速、土壌の性質が、BCの地層中での挙動に及ぼす影響を調べた。 実験方法として、疎水性のBCとして米国Cabot社製のBlackPearls2000を、負に帯電したBCとして、Aqua-Black001(東海カーボン製)を用いた。天然有機物(NOM)としてはIHSSから購入したSuwanee River NOM(SRNOM)を用い、それ以外に多糖類としてアルギン酸ソーダを利用した。土壌は、東京大学構内の地表から1.8mおよび4.4mの深さから摂採取した粘土質土壌をA-Iと、粘土性のローム層をA-IIと命名して使用した。土壌カラム実験は、0.4-1.0mmに篩い分けた土壌を、内径14mm、長さ88mmのガラスカラムに充填して行った。 実験の結果、BCとSRNOMやアルギン酸ソーダを3日間接触させ平衡状態を保ったところ、これらの有機物はBCの水中での分散を促進することが示された。土壌カラムからの流出水中のBC濃度を連続的に測定したところ、有機物が付着したBCと同じ電位に帯電していた土壌A-IIの方が、土壌A-Iよりも遅く破過が始まり、なおかつ低いBC濃度であった。これは、土壌とBCの電気的な反発力よりも、BCの物理的な捕捉の方が大きく影響したためと考えられた。即ち、粒径が小さい土壌A-IIの方が、粒径が大きい士壌A-1よりもBCを捕捉しやすいと考えられた。 本研究の結果から、土壌中、あるいは地下帯水層中でのBCの挙動は、土壌粒子の特徴、有機物の含有率、塩分濃度、あるいはこれらの変動などに影響を受けることが明らかにされた。特に、これまで土壌に吸着してほとんど移動しないと考えられていたBCが、有機物との反応により容易に水中に分散して移動することが明らかになった。
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Research Products
(2 results)