2010 Fiscal Year Annual Research Report
放射性廃棄物処分におけるセメント-ベントナイト界面の物質移動と変質予測
Project/Area Number |
09F09306
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 努 北海道大学, 大学院・工学研究科, 准教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
YOGARAJHA Elakneswaran 北海道大学, 大学院・工学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | セメント / ベントナイト / 放射性廃棄物 / 多価多成分イオン輸送現象 / カルシウムシリケート水和物 / イオンの固定化 / 表面性状 / 熱力学モデル |
Research Abstract |
本年度は、セメント硬化体とベントナイト間の多価多成分イオン種の輸送現象の相互作用を理解するために、セメント硬化体表面の大部分を占めるカルシウムシリケート水和物(C-S-H)の電気的性状を詳細に調べた。C-S-Hの表面上には、SiO_4四面体に起因するSiOH基とSiO基が存在し、密度分布を推定する必要がある。本研究では、NaイオンがSiOHに吸着せず、他方CaイオンはSio基に吸着することに着目して、NaOH滴定によりSiOH基を、Ca(OH)_2滴定によりSiO基を算定した。求められたSiOH基とSiO基の表面サイト密度から、電気二重層モデルを用いて表面電荷密度分布を求め、Clイオンがこの表面荷電点で表面錯体を形成すると仮定して表面錯体生成によるClイオンの固定化モデルの高度化を図った。この高度化したモデルについては、実験的に得られたClイオンの固定化挙動を昨年度より良く再現できることも確認している。 次に、ヨウ素、セレン、クロムのイオン輸送現象に本モデルを適用した。その結果、実験データの再現が十分にできないことが判明した。この原因としては、SiOH基とSiO基とヨウ素、セレン、クロムイオンが錯体を形成する反応における平衡定数として、単純な系における既往の研究データから引用したためと考えられる。従って、多成分イオンが存在する際のSiOH基とSiO基とヨウ素、セレン、クロムイオンとの錯体形成反応の熱力学的平衡定数を求める必要があると考えられる。 また、多成分イオン種間相互作用、表面錯体反応、炭酸化、鉱物の溶解反応を考慮した熱力学的モデルを用いて、セメント硬化体から溶出したCaイオンがベントナイトと反応して生成する2次鉱物についても検討を加えた。これらの成果は、3篇の学術論文として公表済みであり、さらに国際会議でも2回の口頭発表を行っている。
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