2009 Fiscal Year Annual Research Report
陽電子消滅法のための超電導転移端マイクロカロリメータの開発
Project/Area Number |
09F09307
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 浩之 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
R.M. T.Damayanthi 東京大学, 大学院・工学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 超伝導転移端センサ / イリジウム / 鉛 / エネルギー分解能 |
Research Abstract |
陽電子消滅Y線同時計数ドップラーブロードニング測定法への応用を視野に入れ、陽電子消滅で生じるY線のエネルギー511keV近傍における精密なエネルギースペクトロスコピーを目指して超伝導転移端センサ(TES : Transition Edge Sensor)の研究を行っている。本課題ではY線吸収体として機能する鉛バルクをイリジウム超伝導薄膜温度センサ上にエポキシでとりつけたY線TESの開発を進めており、1年目にはY線入射応答の高速化とエネルギー分解能の向上を目標とし、研究開始後の半年間において、まず、温度センサと熱浴間の熱伝導度を適切に制御することで、従来比4倍以上に相当する高速応答を達成した。具体的には温度センサとして機能する200μm角、厚さ100nmのイリジウム薄膜を、ごく薄いシリコン層上に窒化シリコン400nm層が積層された構造体上に製膜する手法を確立した。これにより窒化シリコン層のみで形成されるメンブレン上に作成した従来型素子より、温度センサと熱浴間の熱伝導度を適度に向上させられる。そして0.7mm×0.7mm×0.75mmの鉛バルク吸収体をエポキシでイリジウム薄膜上に取り付け、固定した。吸収体接合にはフリップチップボンダを新たに適用することで、イリジウム薄膜内の応力緩和、吸収体とイリジウム薄膜の正確な位置合わせを可能にしている。試作素子に137Cs線源からのY線を照射し応答を評価したところ、速い成分1.9ms、遅い成分29.3msから成る信号立下りが観察され、窒化シリコンのみのメンブレン上にTESを形成した従来型素子の立下り時間(速い成分3.1ms、遅い成分135ms)に比較して充分、高速化が図られ、Y線検出における計数率特性を大きく向上させることに成功した。なお取得したエネルギースペクトルにおけるエネルギー分解能は9.2keV@662keVであった。本期間において実証したY線TESの応答高速化の手法を基礎とし、今後、吸収体の接合法の改善を図ることで、Y線分光性能の向上を目指す。
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Research Products
(2 results)