2011 Fiscal Year Annual Research Report
種分化の室内実験 : ショウジョウバエの雑種に由来する種の分離
Project/Area Number |
09F09308
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
澤村 京一 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 講師
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CHAVALI Vishalakshi 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | ショウジョウバエ / 種分化 / 生殖的隔離 / 性的隔離 / 交配後接合前隔離 / 実験室集団 / 分子マーカー / 染色体逆位 |
Research Abstract |
アナナスショウジョウバエとパリドーサショウジョウバエは南太平洋の島嶼部(サモア・トンガ・フィジー)において同所的に分布する近縁種である(同所的集団)が、他の地域の熱帯・亜熱帯では前者のみが生息する(異所的集団)。実験室で人工的に作出された雑種には雌雄ともに妊性があるので、なぜこれら2種の集団は遺伝子が混じり合って融合してしまうことなく、同所的に生存可能なのか生態学的・進化学的に謎であった。本研究ではこの疑問に答えるべく、雑種に由来する実験室集団を確立・維持し、これまでに分子マーカーを用いた遺伝学的な解析を行ってきた。基礎データが蓄積し、現在これらを統計処理することで考察を試みているところである。本年度は以下の点が明らかになった。(1)正逆交配で非対称な交配前隔離が存在し、異所的集団よりも同所的集団の方が隔離の程度は強い(つまり、隔離の強化あるいは生殖形質置換が生じている)。(2)これまでに検出されてこなかった交配後接合前隔離(種間交配における受精率の低下)の存在が示唆された。(3)雑種の生存率や妊性は親種と遜色がないので、自然界では(1)および(2)の隔離によって2種が維持されているものと思われる。これらの研究成果については、現在投稿論文として執筆中である。本研究以前に野外集団の遺伝学的解析(系統樹作成)によって、これら2種間でゲノムの一部に遺伝的浸透があることが分かっていた。しかし、本研究の結果が示唆するところでは、生殖的隔離の原因となるゲノム領域では種間遺伝子浸透が妨げられており、これらによって種が維持されているものと考えられる。つまり、性的隔離および受精率低下の原因遺伝子は、これら2種の種分化を引き起こす「種分化遺伝子」であると言うことができる。
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