2010 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける多環芳香族炭化水素/ニトロ多環芳香族炭化水素の分析法と環境動態
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09F09346
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
早川 和一 金沢大学, 薬学系, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
李 英 金沢大学, 薬学系, 外国人特別研究員
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Keywords | 多環芳香族炭化水素 / 海水 / ionic liguid / magnetic nanoarticle / HPLC |
Research Abstract |
多環芳香族炭化水素(PAH)及びそのニトロ誘導体(NPAH)は,石油や石炭などの化石燃料の不完全燃料に伴って発生し,大気,河川,土壌,海洋など様々な環境中に広く分布する代表的な有害化学物質の一つである。PAH, NPAHの中には,従来から強い発がん性を有する物が知られているが,最近では内分泌かく乱作用や活性酸素種産生作用を有する物もあることがわかってきた。そのため,ヒトの健康だけでなく生態系にも影響を及ぼす可能性が懸念されている。大気については,すでにPAH, NPAHの汚染実態の調査が続けられているが,河川や海洋は濃度が低く適用できる分析法がないため,一部の河川や海洋のPAH濃度が報告されている以外,その汚染実態は殆どわかっていない。環境全体のPAH, NPAHの収支を計算して将来予測を行うためには,とりわけ分布容積が極めて大きいが,濃度が極めて低い海洋の汚染実態を明らかにする必要がある。本研究では,大量の海水試料を用いた極微量PAHの測定を可能にすることを目的に,まずナノサイズの磁性粒子表面にイオン性液相を共有結合させた前処理剤(イオン性液相固定磁性ナノ粒子)を合成した。transmission electron micrographyとthermogravimetric analysisを用いて調べた結果,粒子1個に150分子のイオン性液相分子が結合していることがわかった。さらにX-ray diffraction measurement及びmagnetic measurementを用いて調べた結果,本前処理剤が強い磁性を有していることが確認できた。模擬希薄PAH水溶液に本前処理剤を懸濁した後,強磁石を近づけると,瞬時にPAHを捕集した前処理剤を定量的に回収できることがわかった。以上の成果を踏まえて,開発した前処理剤の河川及び海洋への応用を進めている。
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Research Products
(2 results)